「上沼基礎演習」を受講して
T.K.
上沼ゼミを受講した理由
私は2年生になったら何らかの基礎演習を受講しようと思っていた。その理由は、1年次に様々な分野の授業を受講したが、どの教授も自分の受けもつゼミの話をされたり、教授による一方向の講義ではなく、ゼミ形式のような双方向の講義こそが本来の大学の授業であることを強調されていたからだ。それでなんとなくゼミというものに興味を持ったわけだが、数ある社会科学演習の中でも上沼ゼミを選んだのは、初めてゼミというものを経験するうえでの配慮が十分なされていたからだ。具体的には教授の専門分野にとらわれることなく、2冊の基本書(橋爪大三郎著『冒険としての社会科学』毎日新聞社、森嶋道夫著『なぜ日本は没落するか』岩波書店)を用いて、『社会科学とは何か?』について考えていくため、特に予備知識を必要としないこと、また受講者全員がPCでレジュメを作成し、それに基づいて発表することによって、他のゼミ生のレジュメと比較、検討ができることなどが挙げられる。
上沼ゼミでの1年間
前期は橋爪大三郎著『冒険としての社会科学』を使用して各章のレジュメをwordで作成し、発表した。この過程では、テキストに忠実に読み、そのエッセンスをレジュメに反映させることが求められた。最初は、中心的内容とは関係のない事柄までレジュメに書き込んでしまったが、何度もテキストを読み、試行錯誤を繰り返すことによってかなり上達できたと思う。またテキストの内容も、西洋の市民革命から日本国憲法の成立過程を記述し、日本社会の根底に働くメカニズムを模索するというもので興味深かった。
後期は、森嶋道夫著『なぜ日本は没落するか』を使用して各章のレジュメをPower Pointで作成し、プレゼンテーションを行った。そして上沼教授から再三ご指摘をいただいたことが「最も印象に残ったことを中心にプレゼンしなさい」ということだった。これを私なりに解釈すると「あなたが最も伝えたいことは何か」ということである。ここで前期と同様にテキストを忠実に読み、そのエッセンスをレジュメに反映させて発表すればよいと考えていた私は戸惑ってしまった。本書の著者森嶋氏の提言は、非常に斬新的であるのだが賛同するにせよ、反論するにせよ、自分が「最も伝えたいこと」がないことには致命的なことであった。確かにこの原因を知識のなさのせいにすることは簡単なことであるが、やはり問題意識をもつことは大事であると痛感させられた。それと同時に、日頃から多くの知識を獲得するように努めることが大事だと思った。
今後の研究
昨今、日本的経営の崩壊と言われる中、リストラ、分社化、M&A、人事評価などの組替えが盛んに行われている。つまり、現在日本企業は大きな転換期を迎えている。例えば、年功序列、終身雇用は崩壊し、能力主義型が大勢を占めると言われている。しかし人間が人間を評価する以上、曖昧なものであり、どのような評価をすることが企業全体の利益につながるのかという問題がある。またカンパニー制のような分社化も盛んに導入され、分権型組織は、迅速な意思決定と、組織に活力を与える効果をもたらすと言われている。しかし、いかに組織をつくり、管理してゆくのかという問題が発生する。何故ならば、権限と責任は常に移り変わる曖昧なものだからである。そしてその背後には必ず何らかの体質、要因が介在するはずである。社会科学が「自分の社会についてよく知ること」であるならば、変革を迎えた日本企業という視点から今後は、社会科学について考えてみたいと思う。
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