趣味でスキューバダイビングをやっているので、大学に入り毎年夏に2週間程小笠原諸島の父島へ潜りに行っています。小笠原諸島は美しい自然と珍しい固有種が息づき、コバルト色に輝く洋上に浮かぶ島々です。
この小笠原諸島は2003年5月26日、環境省と林野庁の検討会において世界自然遺産の候補となりうる地域に選定されました。近い将来には世界自然遺産になるそうです。「世界自然遺産」になれば今後永久的にその地域の自然が守られていくので、一般的には良い事だと思われています。確かに僕もそう思っていました。
しかし、2004年に世界文化遺産になった熊野古道の現状をニュースでみて、ひとつの疑問がでてきました。「小笠原は世界自然遺産にするべきなのか?」 熊野古道では遺産登録地域の地権者との対立や観光地化による影響によって、結局は貴重な参道の景観を壊すことになってしまったようです。
例えば、観光地化での問題です。世界遺産に登録されることによって、当然ながら、どっと観光客が押し寄せます。そしてそれに対応するために、いろいろな整備が行われます。観光客が来ることによって、地元は活性化されるといういい点もありますが、観光地化による地域の整備によって本当のよさが失われてしまったという声もでてきています。
また、地権者との対立によって参道に落書きがされてしまったという問題もあります。この熊野古道の地主は、何百年とこの森や山を維持してきたきこりの子孫です。しかし熊野古道がユネスコに登録され認められたことにより、この熊野古道の道を使えなくなり、それにより木を切っても、木を下に下ろすことに大変な時間がかかることになってしまいます。このことに抗議して地権者たちは参道に落書きをして自分の土地を主張したのです。
このように小笠原も熊野古道の問題と同じようにとは言いませんが、似たような問題が世界遺産登録によって生まれてしまうのではないかと考えました。
そこで、このゼミでは小笠原の自然の保護だけを考えるのではなく、小笠原の島民・観光客などの利害を考えながら、自分なりに「小笠原と世界自然遺産」の関係を研究していきたいと思います。
幻のビーチ ジニービーチ