文化財保存環境について

早稲田大学社会科学部
政策科学研究 上沼ゼミナール
篠原有紀


<研究動機>

私は以前から文化遺産や文化財に非常に興味があった。
幼いころから両親に連れられ、これまでに文化財保護に関する遺跡調査過程やその報告の場として展示会に多く赴いてきた。
多くの文化財やその保存施設をまのあたりにし、自分の中でそれらの持つ独特な雰囲気や伝統に強く惹かれたのである。
大学での勉強においてもそのような分野を中心と学び、さらに知識探求への熱望が生まれた。
しかし、さまざまな知識を得ていくと同時にそれらの持つ疑念や問題が多く見えてくる。
有名な企画展示には多くの人が集まるが、その中で、文化財保護のあり方について公開と調査研究、保護の間に矛盾が生じるのではないかと感じた。
本来ならば人の手が加わらずありのままの状態で保存維持することが最善な場合もある。
膨大な調査や公開において、文化財への負担は大きいのではないか。
文化財もそのままの状態を維持し続けることは不可能に近い。
完全に劣化を止めることはできないが、少しでも長くよりよい形で後世に伝えることができるように、多くの保存技術を駆使し、公開していくことが重要であると私は思う。
またさらに、保存技術・体制に関しては多方面からの知識が必要である。
調査・公開することと現状をそのまま残すことの間で多くのジレンマがあり、それらの最善策を模索するのは困難である。
文化財の最善な利用の形、残していく体制のあり方について考えていきたいと考えた。


<文化財保護環境における問題例>

●技術保存における後継者減少、原材料入手困難

文化財の保存のために欠くことのできない技術(文化財保存技術)がある。
これらの文化財保存技術は、後継者の減少や原材料の入手難など多くの問題を抱えているため、文化庁では、
選定保存技術として選定し、その保護に努めている。
 
 

●防災対策

※文化財保護法の制定
この法律制定の景気になったのは、昭和24年(1949年)1月26日の法隆寺(奈良県生駒郡斑鳩町)の混同の火災による炎上に伴って、建物とともに壁画が失われたという事件である。
この事件は、全国に衝撃を与え、文化財保護体制の整備を要望する世論の高まりとなり、
文化財の保護についての総合的な法律として、議員立法により制定された。
この火災が起こった1月26日は、「文化財防災デー」として定められ、文化庁は、
毎年防火事業など災害から文化財を守るための訓練などを行うよう自治体等に呼びかけている。

→さんようタウンナビ

2008年、歴史的建造物として保存運動が進められている
神奈川県藤沢市大鋸の洋館「旧モーガン邸」火災

●学芸員の分業制

博物館によって配置学芸員数の格差の現状。
博物館の規模に応じて適切な人数の学芸員が配置されるよう、体制面の整備が必要である。
その解決策として海外で用いられている、多岐にわたる学芸員任務の分業制が一つ挙げられる。
…収蔵管理員/展示専門員/研究員/教育員…
しかしこれに伴い、博物館の活動を総合的に行う学芸員の存在がなくなり、業務一本化による博物館自体の傾向の偏りが懸念される。

Last Update : 08/01/29
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