八王子市の財政と今後の課題(仮)

上沼ゼミナール二年
浜野 正太

研究動機について

 八王子は東京都は多摩地域に属する市です。私は八王子市で生まれ、今日まで八王子で暮らしてきました。私はつい最近まで八王子のことが嫌いでした。特に高校時代、自分の生まれ育った地に対して多くの劣等感を抱いていました。なぜ、八王子市は東京都にあって「区」ではなく「市」という行政単位なのか。なぜ八王子市は東京都なのに電話番号が「03」ではなく「042」で始まるのか。なぜ八王子市は東京都なのに「東京都下」と呼ばれるのか。なぜ八王子市民は都心部のことを「都内」と呼ぶのか。そして東京なのに、なぜテレビで見るような高いビルやきらびやかな装飾がなく、田舎くさいのか。
 大学に入り、様々な出身を持つ人に出会い、色々な人の「地元」の話を聞いているとき、ふと気づきました。「自分は八王子についてあまり多くを知らないんだなあ」、と。しばらくは何も考えないままでしたが、とある方が八王子について語ってくださったことをきっかけに、八王子に対する愛着が一気に爆発しました。それからというものは、ことあるごとに八王子のことを口にし、八王子のことを考えるようになり、今回の研究テーマにするにいたりました。
 当初の研究テーマとしては、地方分権改革を取り扱おうと考えていましたが、俗に言う地方分権とは要するに中央政府の考え方の総称であって、この言葉自体が言語矛盾を起こしていると感じました。地方分権とは、約1800ある自治体が各々の住民の生活をよりよくするためにとり行う政治的な活動の総和であります。つまり地方分権とは総務省などの中央政府が行う1つの改革ではなく、各自治体が中央政府に対して行う1800の改革要求なのです。
 その考えの下、八王子市について学ぶことにいたしました。国政の観点からすれば1800分の1の小さな政治かもしれません。しかし八王子で暮らす私にとって、八王子は1分の1の政治であって、これなくして国政は成り立たないと確信しています。
 民主主義を支えるものは地方自治です。そして八王子には八王子にしかできない何かが必ずあるはずです。八王子市民が求めていて実現していない「何か」、行政が、議会が目指していながら実現しない「何か」。その「何か」を、今回の研究で探したいと思います。
 八王子市が必要とするものを探求する素地として、八王子市は財政的な安定が必要不可欠です。というのも、どのような政策であってもそれを実現させるにはそのための財源が必要になるからです。そのため、研究の根幹に、八王子市の財政状況を据えなければなりません。確保できる財源と、必要であると考える政策の折衝を図ることで有効な政策提言を目指そうと思います。


目次

  1. 基礎データ
  2. 各地域の事情
  3. 東京都との関係
  4. 税財政
  5. 都市政策
  6. 教育政策
  7. 農業政策
  8. 立法府、行政府
  9. まとめ

1章 基礎データ

位置
都心から西へ40キロメートル
人口
551,354人(平成21年9月時点)
面積
186,31平方キロメートル
国道
中央自動車道、首都圏中央連絡自動車道、国道16号八王子バイパス(以上高速道路、有料道路)、国道20号、国道16号、国道411号(以上一般国道)
アクセス
新宿から電車で約40分
路線
中央本線、横浜線、八高線、横浜線(以上JR)、京王本線、京王高尾線、京王相模線(以上京王線)、多摩都市モノレール

2章 各地域の事情

八王子市は各地域で異なる時期に大規模開発が行われたため、各地域における特性に統一性が図られいない節がある。例えば八王子南部は平成ぽんぽこでも取り上げられたニュータウン地域であり、この地域は今なお大規模な住宅工事が行われている。一方で市街地は戦後すぐに開発が行われたために戸建一軒家が多く、老朽化が進んでいる。一般的に古くから八王子に住む市民は市街地近郊に一軒家を構えている傾向が有る。60年代から80年代に八王子に越した市民は市街地からいくらか離れた地に一軒家を構える傾向がある。90年代以降に越した方は八王子市の郊外のマンションに住んでいると思われる。八王子駅は多くの路線が合流する駅であるが、ニュータウン地域へのアクセスが絶望的に悪く、路線で八王子駅からニュータウン地域の代表格である南大沢に行くには神奈川県の橋本駅を経由しなければならないほどである。各地域の交流は、その発展過程もあってかあまり多くない。そのため八王子市として政策を実行しようとすれば必ずといっていいほど地域間対立が起こるのである。自分の住んでいない地域の道路計画などさらさら興味がないのもまた、そのことに起因する。

3章 東京都との関係

東京都政は、特別区である23区における消防責任や固定資産税の管理があるために事務比率が23区よりになりがちです。そのため八王子市を含めた三多摩地域は都政にあまり多くを期待できないというのが現実のようです。そもそも八王子市は歴史的には神奈川県に属していたのですが、都心部の飲み水確保のために東京に併合されたようです。しかしながら三多摩地域は東京都の人口の4割以上を占め、経済規模は静岡県にも匹敵するほどの地域です。ここでは三多摩地域が東京都にいることのメリット、デメリットを観察し、特別区と対等になれるような関係を模索したいと思います。

4章 税財政

八王子市は税財政面ではここ5年ほどは黒字であり、ある程度優秀であるといえます。主要な税収は、55万人の人口を背景とした市民税、固定資産税であり、市独自の財源(約940億円)のおよそ77%を占めています。多くの政策は財源の裏づけがなければ実施することはできません。また、市区町村は自治体の最小単位であることから、必ず支出しなければならない予算が多くあります。また、国政とは違い、自由に公債を発行することができませんから、市独自の政策を行うためには現状の予算の下で独自の財源を捻出しなければなりません。地域主権の元で、自治体の独自性が求められる中、板ばさみのような状態ではありますが、市の税制、財政を調べ、その改善点を探し、できる限りの自主財源を捻出すべきです。

経常収支比率とは

経常収支比率とは、使途が限定されていないお金のうち、現実には自由にできないお金の割合を表すものです。また、自由に使うことのできないお金を経常経費充当一般財源、自由に使えるお金のことを経常一般財源といいます。
20年度においては、多摩26市平均(91,9%)及び類似団体平均(89,7%)が悪化する中、本市は前年度と同じ86,8%を保っています(八王子市財政白書より)。
※類似団体とは、市川市、松戸市、柏市、町田市、藤沢市です。

歳入

平成20年度の八王子市の歳入は1,762億円になります。内訳は市税が53,3%、国庫支出金が17,8%、都支出金が12,3%、地方債が4,7%、その他が11,9%です。

歳出

平成20年度の八王子市の歳出は1,638億円になります。内訳は性質別で、人件費が18,7%、扶助費が26,7%、公債費10,3%、物件費が10,3%、維持・補修費が1,5%、補助費等8,2%、繰出金11,2%、投資的経費が11,3%、その他が1,8%です。

 平成20年度は、約130億円が形状一般財源ということができます。例えば、このお金を単純に約50万人の八王子市民全員に返還したとすると 2万6千円になります。また、毎年130億円積み立てたとすると杉並区長の山田氏が掲げるような無税自治体を作るといったことも可能になるのかもしれません。

5章 都市政策

八王子市は戦争で多くの路面電車を空襲で失いました。復興に当たって路面電車を全面的に改廃し、大胆な再開発を行ったという敬意があります。それからも多くの主要路線や幹線の整備を行ってきましたが、近年その老朽化や環境の変化によって再開発が行われています。またニュータウン開発においては上とはまったく異なる事情を抱え、今は開発の後期であると考えられます。ここでは八王子の発展過程、また私も含め、市民が不満を感じる部分、そしてこれからの市の計画について問題点を追求したいと思います。

多摩地域の人口規模は47都道府県と比較すると7位、財政規模は静岡県に匹敵する規模があります。

6章 教育政策

八王子市は市立小学校が69校、市立中学校が38校、大学が21校を抱える有数の学園都市です。特に大学が多いために人口における20台の割合が比較的多いのも八王子市の特徴でしょう。教育に関して市が関与できることというのは必ずしも多くはないのですが、学園都市八王子として、国政に注文をつけることは地方分権の観点からみれば妥当なことであると思います。ここでは市の教育政策を考察し、改良点を指摘したいと思います。

7章 農業政策

私個人の考えではありますが、八王子市の農業規模とその伸び白を考えれば、理論上は八王子市は食料については自給ができるものではないかと思います。東京都にあって自給ができるほどの規模を抱えることができるとすれば、八王子市のひとつの特色として外に誇ることができます。開発の余地がある八王子市北西部を中心に農業地帯を設けることで可能性は十分に広がるでしょう。ここでは私の考える農業の規模拡大についてと、八王子にとってそれが必要なのか、そして実現の可能性を現地調査したいと思います。

8章 立法府、行政府

八王子市は東京都ではありますがいわゆる田舎の特色を多分に持ち合わせる市です。市議会の傾向として顕著なのが保守系の会派が常に第一会派であることです。そのため行政も含め、多くの癒着構造が未だに現れています。この状況を打破するために、大胆な市議会改革、行政改革を行うことが、八王子市が新たなスタートを切るために必要不可欠だと確信しています。ここでは2009年に制定された八王子市政治倫理条例、および各自治体に普及しつつある自治基本条例、議会基本条例について調べていこうと思います。

9章 まとめ


今後の予定

「八王子ゆめおりプラン」についてさらに調べる。
財政白書、市税白書を考察していく。
都市計画について実際に観察してみる。
自治・議会基本条例の先進事例を考察する。
テーマが多いので、やりながら絞込みを行う。

前回の質疑

  • 都市、農業、などと1つづつやる必要があるか?
  • 地域の住民構成の歴史的変遷と利害関係の違いへの視点
  • 政策分野に関するステークホルダーとしての行政と住民
  • その違いが地域の製作過程にどう影響しているのか

    八王子市財政白書

  • 市財政の現状
  • 地方交付税交付金と地方財政計画
  • 財政の指標
  • 地方債と基金、債務負担行為
  • 財務諸表を活用した分析
  • 本市の財政健全化への取り組み
    八王子市財政白書平成21年度版(平成20年度決算)

    八王子市ホームページ
    八王子市財政白書(平成20年度版)
    Last Update:10/1/26
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