企業の環境保護に対する取り組み

早稲田大学社会科学部上沼ゼミ2年 伊藤祐太


研究動機

以前から環境問題に興味があったが、環境破壊に大きな影響を与えているのは誰かということを考えていくとやはりそれは私達人間である。そして私たちの生活は多くの企業の活動や商品によって支えられている。そこで、企業がCO2排出や環境破壊に大きな影響力を持っていると考え、企業が環境保護に対する取り組みを行っていけば、環境負荷を大幅に軽減できるのではないかと思いこのテーマを選んだ。

章立て

第1章
第2章
第3章


<企業はどれだけの温室効果ガスを出しているのか>

日本における2007年の温室効果ガス排出量は13億7400万トンであり、温室効果ガス別に見ると二酸化炭素(CO2)がそのうちの94.9%を占めている。そこで、次に日本における部門別二酸化炭素の排出量を見てみよう。

出典:全国地球温暖化防止活動推進センターJCCCAホームページ

まず、それぞれの部門の説明をしよう。

・エネルギー転換部門
エネルギー転換部門とは、我が国に国内供給されたエネルギー源について、国内供給された際のエネルギー源と異なるエネルギー源を製造・生成するために、発電、蒸気発生、化学変化、分離・混合、位置エネルギー変化等の操作に使用されたエネルギー源の量、製造・生成されたエネルギー源の量及びこれに附帯する量を表現する部門をいう。

・産業部門
産業とは、第一次産業及び第二次産業、すなわち我が国標準産業分類にいう農林水産業、鉱業、建設業(以下この3つの部門を総称し「非製造業」という。)及び製造業に属する法人ないし個人の産業活動により消費されたエネルギー量であって、運輸部門に関するものを除く量を表現する部門をいう。

・民生(家庭)部門
民生(家庭)部門とは、個人世帯の活動により直接に消費されたエネルギー量であって、自家用乗用車等運輸部門に関するものを除く量を計上する部門をいう。

*JCCCA注:
「部門別二酸化炭素排出量」にいう「民生(家庭)」部門と、「家庭からの二酸化炭素排出量」とでは指している内容が異なるので、注意を要する。(共に温室効果ガスインベントリオフィス作成の資料)「家庭からの二酸化炭素排出量」は、「民生(家庭)」に加えて、運輸(旅客)部門の自家用乗用車(家計寄与分)、廃棄物(一般廃棄物)部門で計上された排出量、および水道からの排出量を足し合わせたものである。 ( 一般廃棄物は非バイオマス起源のみを対象とし、事業系一般廃棄物を含む。)

・民生(業務)部門
業務とは、産業・運輸部門に属さない企業・法人のエネルギー消費であって、運輸部門に関するものを除く量を計上する部門をいう。

 (解説)
 産業・運輸部門に属さない企業・法人のエネルギー消費とは、
 ・運輸業、電力・都市ガス・熱供給業以外の第三次産業 
 ・商業(小売業、卸売業) 
 ・サービス業他(個人向サービス業、飲食業、金融・保険・不動産業、政府・地方公共団体)
 ・製造業、運輸業、電力・都市ガス・熱供給業の本社・研究所等間接部門に属する法人ないし個人の活動により消費されたエネルギー量であって、運輸部門に関するものを除く量を計上する部門をいう。

・運輸部門
運輸とは、人・物の輸送及びこれに付帯する業務に伴い消費されるエネルギー量を計上する部門をいう。

(出典:全国地球温暖化防止活動推進センターJCCCAホームページより)
次に直接排出量と間接排出量の違いを説明する。
「直接排出量」も「間接排出量」も、化石燃料の燃焼によるCO2排出量を、エネルギー転換部門、産業部門、民生部門、運輸部門といった部門ごと(あるいはさらにその細分類ごと)に示すものです。両者の違いは、発電や熱の生産のための化石燃料の燃焼による排出量をどの部門に配分するか、という点にあります。直接排出量は、発電や熱の生産に伴う排出量を、その電力や熱の生産者からの排出として計算したものです。電力会社の発電に伴う排出量はエネルギー転換部門の「事業用電力」に、熱供給事業者の熱生産による排出量はエネルギー転換部門の「地域熱供給」に、また、製造業の会社などによる自家用発電に伴う排出量はその会社が属する産業(産業部門の「鉄鋼」など)において計上されています。一方、間接排出量は、発電や熱の生産に伴う排出量を、その電力や熱の消費者からの排出として計算したものです。それらの排出量は、電力及び熱消費量に応じて最終需要部門(電力や熱の使用者)に配分されます。例えば、家庭で電気を使用した場合、それに伴う排出量は家庭部門の直接排出量には含まれませんが、間接排出量には含まれることになります。(出典:温室効果ガスインベントリオフィスHPより)

企業と環境問題

高度経済成長期に生じた公害問題は、工場から排出された汚染物質が原因だった。そして近年懸念されている地球温暖化問題に関しても、企業は主要な発生原因のひとつである。

かつての公害対策においては、環境規制の導入により企業は法律によって定められた環境基準を守るように環境対策を行い、その結果、大気汚染や水質汚染による健康被害は次第に減少していった。しかし、地球温暖化問題などの近年の環境問題の多くに対しては、従来の法的規制だけでは十分に対応ができない。たとえばCO2の場合、現時点では企業には法的な削減義務がない。CO2をいくら排出しても法的な罰則がないので、自社の利益だけを考えるならば、企業はまったくコストをかけないことをえらぶことになるだろう。

一方で、環境問題に対する社会の関心が高まったことから、消費者・投資家・取引先などが企業に対して法的な環境規制の遵守だけではなく、自主的に環境対策を取り組むことを求める意見が強まっている。このため、多くの企業が環境を配慮した経営、「環境経営」に取り組むようになっている。

さらに企業の環境対策に社会的関心が高まったことから、いくつもの環境格付けが公表されるようになった。環境格付けとは、企業の環境対策を評価し順位付けを行うもので、企業以外の第三者が各企業の環境報告書などをもとに企業の環境対策の取り組み状況や情報開示の度合いを評価し、企業のランク付けを行う。 日経 環境経営度調査

環境格付けで上位に入ると、投資家から投資先として選別されやすくなり資金調達が容易になったり、企業イメージが向上するなどの効果が発生することが期待されている。


参考文献

・栗山浩一『最新 環境経済学の基本と仕組みがよ〜くわかる本』(秀和システム)(2008)
全国地球温暖化防止活動推進センターJCCCAホームページ  

Last Update:2010/01/19
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