労働のあり方
〜失業問題と過労死
早稲田大学社会科学部
政策科学 上沼ゼミナール
鈴木 智也
研究動機
大学に入り、“就職”という言葉がだんだんと身近になり、「何のために働くのか?」という
シンプルな疑問が思い浮かんだ。よく日本人は働き過ぎと言われているが、以前スペインに旅行で
行った際、現地の人達の働き方に驚きを感じた。日曜は基本休みで、シエスタと呼ばれる昼休みを
13:00〜16:00までとり、20:00前には仕事を止めてしまう。一方で、日本では過労で
倒れてしまう人がいたりストレスで精神的な病に倒れてしまう人もいると聞く。そして不思議なことに、この
「過労」という問題は欧米諸国には見られず日本特有の問題として認識されている。
近年では、“内定取り消し”、“就職氷河期”などといった言葉が周りでささやかれ出し、
アメリカに端を発した金融恐慌によって失業・倒産などが騒がれだした。職に就けず路頭に迷う人がいる一方で膨大な量の仕事によって
過労で倒れたりする人もいる。このような矛盾した現状の中で、あらためて「働くとはどういう意味か?」について考えたい
と思い、今回研究テーマとしてみた。
現代の労働をめぐる問題は就労問題や労働災害などだけでなく、晩婚化・少子化や環境問題など
多岐に渡る問題となっている。その中でも、過労死に関する問題を取り上げたいと思う。
過労死が起きる原因が長時間労働にあるのだろか?
もし長時間労働に原因があるのなら「ワークシェアリング」などの政策は日本に適用できるのか?
なぜ欧米諸国、とりわけ労働時間が日本と同じ水準にあるアメリカなどでは過労死が無い(あるいはほとんど無い)のか?
などの疑問を中心に研究を進めていき、現状を打開する政策とはどういうものか研究を通して見ていきたいと思う。
- 過労やストレス⇔失業
- 日本特有の問題、過労死・過労自殺
- 日本の労働事情
- ホワイトカラーエグゼプション
- “時間”の偏りではなく“仕事分担”の偏り
- 労働の二極化
- 雇用の流動性を高める
- 一度失敗するとお終いの日本

14時頃のマドリード中心街
章立て
第一章:過労死の原因は長時間労働なのか
第二章:女性型労働
第三章:
第四章:
第五章:
第一章:過労死の原因は長時間労働なのか
ヨーロッパ諸国の人々からみて、日本人は「働き過ぎ」というイメージが定着している。
実際に図1に示したのは、各国の年間総労働時間である。ここで言う“総労働時間”とは“所定内労働時間”
=事業所の就業規則で定められた正規の始業時刻と終業時刻との間の休憩時間を除いた実労働
時間数と“所定外労働時間”=早出や残業、臨時の呼び出し、休日出勤等の実労働時間数
(東京都総務局)の合計時間の事で、日本の場合は、先進国の中でも最も長い部類に入る。
特徴的なのは、アメリカに次いで所定外労働時間が他国のそれを圧倒している事だ。フランス・ドイツ
など、ヨーロッパ諸国にはそもそも就業時間外で働くという事がない。
日本国内でもこの長時間労働は問題視されている。「過労死ライン」と呼ばれる基準が存在する。
「何時間働くと過労死するのか」(J-CASTニュース)

図1-1:年間総労働時間 (厚生労働省 今後の労働時間制度に関する研究会:資料1−3)
しかし、本当に長時間労働が過労死の原因なのだろうか。
例えば、アメリカでは年間総労働時間が1929時間と
日本とほとんど変わらない水準にあるが、過労死が問題視されたことはほぼ無い。
この長時間労働の背景には、特定の個人に極端に大量の仕事が集中し、それ以外の人には仕事の
機会さえないという大きな不均衡がある(竹信三恵子「ワークシェアリングの実像」)。
この不均衡は以下の三つに分けられる。
- 男男間不均衡…働いている男性と無職の男性間に存在する不均衡。
過労死に怯えなければならないほど働かせれる人がいる一方で、職を求めて不安な日々を
送っている人がいる。これは、“仕事がない”と悩んで自殺していく人々と同じくらい、
超過労働のために死んでいく人が続出しているほど深刻な問題になっている。
- 男女間不均衡…
- 老若間不均衡…
今後の展望
- 日本と外国の違いについて→労働に関する考え方や制度
『労働法律旬報』旬報社(2008年2月号)
長時間労働が過労死や過労自殺の原因なのか?
全然関係ない、というわけでもないがそれだけではないはず。同じ長時間労働をしている人でも普通に生活している人もいる。また、アメリカなどでは日本と同等かそれ以上に過酷な労働をしている人もいるが、過労死が(日本ほど)問題化されていない→過労死や過労自殺は個人の責任・問題なのか?
大野氏によれば、職場環境がその一端となっている。日本企業の特徴として挙げられるのが、仕事の分担が曖昧であり他人の仕事との線引きが明確でない事である。そのため、仕事の責任も分担もある人に多くなり、ある人には少なくなるという『格差』生じる。つまり“時間”の偏りではなく、“仕事内容”の偏りに原因があるのではないだろうか。
さらに、過労死を助長するものとして孤立化した働き方が挙げられる。大野氏は長時間の仕事自体は高度経済成長時代にも見られたがその時は同じ仕事をする人間がいて協力していたと述べている。この状態で仕事をしていた人で過労死・過労自殺をするはいなかったというのだ。
しかし現在では、人員削減などによって一人では対応しきれないほどの仕事や責任を背負い込み、過労死にいたるケースが多く見られる。
- 柔軟な雇用制度
- 雇用者側の視点にたってみる
- テーマをもっと具体的なものに絞る
参考文献・URL
last update:2009/12/19
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