PISA型学力調査の結果などをもとに日本の子どもの教育に対する問題点を挙げ、その改善点を考察する。
日本の子どもは、知識・理解の観点で優れた成績を収めているが、それを表現することが苦手な傾向がある。また、他国に比べて学ぶ意欲が低く、現在の勉強と将来の生活を結びつけて考えることができないということも指摘された。子どもたちが学びたいと思うためにするべきこと、教科教育や総合学習などの学習が将来の生活に役立つこと、そして子どもたちが自分の考えをきちんと論理的に表現できるようにすべきこととはどういうことかを挙げ、そのために地域がどのような役割を担えるか考察する。
第二章 海外の地域による教育政策
ドイツのミュンヘンにおける「ミニ・ミュンヘン」の取り組みやその他の事例を挙げながら、教育に対する海外地域の活動を考察する。
二年に一度NPOとミュンヘン市が協力し、多くのスポンサーが参加して夏休みに開催される「ミニ・ミュンヘン」は7〜15歳を対象として、三週間にわたって行われる。これは市内に仮想都市をつくり、子どもが自治を行うというものである。職業体験などキャリア教育の充実はもちろん、自意識や自立心・向上心を育て、また多様な人とふれあうことにことによって他者との共生の大切さを学ぶ。
これを模倣した取り組みは日本のさまざまな地域で行われており、例としてはミュンヘンの姉妹都市である札幌市の「ミニ・さっぽろ」や横浜市の「ミニヨコハマシティ」だ。また、「ミニ・さっぽろ」は主に札幌市が主催しているのに対し、「ミニヨコハマシティ」はNPO団体が主催するなど政策アクターも様々である。これらを比較し、研究していくことで政策提言に活かすとともに、今後の課題を探る。
第三章 日本各地での取り組み
三鷹市の小・中一貫校の取り組みや、富士宮市で行われている「富士山学習」などを挙げ、地域に根差した教育について考察する。
三鷹市では、子どもたちの「人間力」「社会力」の育成とよりよい地域づくりを目指して小中一貫のコミュニティ・スクールを用いた教育を行っており、学校・家庭・地域・企業がそれぞれ役割を果たしている。具体的な事項については学識経験者や教員などからなる「学校運営部」、教科ごとの「カリキュラム部会」、青少年対策委員会や交通対策委員会の役員も含む「コミュニティ・スクール部会」の3つの部会から検討する。また各小中学校から「小・中一貫コーディネーター」となる教員を一人選び、小中の連携をスムーズにしている。
教科課程では小学校の一部授業での教科担任制の導入や9年間にわたる生き方・キャリア教育が特徴として挙げられる。この中で児童・生徒に問題解決型の学習を定着させることで知識・理解の他、日本人が苦手とする思考力・表現力の強化と学ぶ意欲の向上に成功している。
「富士山学習」は中学3年間を通して、富士山に関する歴史・環境など自分でテーマを決め、研究・発表する。地域と共同で体験学習を行うなかで、コミュニケーション能力を高め、人間性を育成する。
小・中一貫校政策は市が中心となって進められ、「富士山学習」は当初富士宮第二中学校で行われていたが、現在は富士宮市の全中学校で実施されている。
第四章 政策提言