東アジアFTAについて
上沼ゼミナール
社会科学部二年
丸橋布実
研究動機
私が東アジアFTAについて研究しようと思ったきっかけはもともと国際関係に興味があり、その中でも特に日本と関係が強いのが東アジアだと考えたためである。しかし、東アジアの経済発展は現在国レベルでは様々な障害があり思うように進んでいないことが現状である。
その一方で、地方・地域レベルで見てみると、インフラを整備したり文化交流・技術交流を通じて発展し、経済圏が形成されている所もある。そしてその地域主体の経済圏の形成は日中韓、あるいはASEANなどの国レベルでのFTA締結に影響を与えると考えられる。
そこで東アジアの地域経済圏を進める上での課題を見出し今後日本は地方レベル・国レベルで東アジアとどのように関係を深めていくべきか政策提言を行いたい。
章立て
第一章 東アジアの地域経済圏の現状
第二章 地域経済圏を進める上での課題
第三章 地域経済圏の今後の展望
第四章 政策提言
第一章 東アジアの地域経済圏の現状
(「東アジア都市ネットワーク」 出所:北九州市ホームページ)
現在、東アジアでの主な地域経済圏は、ロシア極東地方、韓国、北朝鮮、中国東北地方で構成される「北東アジア経済圏」、九州地方、韓国、中国の山東地方で構成される「環黄海経済圏」、香港と台湾を中心とする「華南経済圏」などがある。その中でも「環黄海経済圏」は北九州市を中心として地域交流に関する具体的な取り組みが次に見るように展開されてきている。
北九州市は1991年に環黄海経済圏構想を提唱し、下関市とともに姉妹都市・友好都市である韓国の仁川広域市、釜山広域市、中国の大連市、青島市の計6都市が参加する「東アジア都市会議」をスタートさせた。これまで環境保全セミナーやスポーツ交流などの競争事業を通じて連携強化や国際交流を行ってきた。現在では中国の天津市や福岡市なども追加加盟し10都市が会員都市となっている。
そして、東アジア経済圏の規模拡大の中から具体的な地域交流をめざして平成16年に新たに「東アジア経済交流推進機構」が創設された。この機構は分野別に具体的な施策を検討・実施する部会を導入し、現在、ものづくり部会、環境部会、観光部会、ロジスティク部会など4つの部会で、10都市共同の事業展開が図られている。
北九州市は、環黄海圏構想において中心的な役割を果たしてきた。北九州市における生産技術の高度化や自治体が取り組むべき環境再生のノウハウなどが、中国や韓国で活用されるようになった。しかし、経済圏成立から15年以上が経ち、北九州の影響力は低下し始めている。今後は、教える立場からともに学ぶ立場として問題点や課題解決を求められるようになってきている。
第二章 地域経済圏を進める上での課題
東アジア経済交流推進機構が取り組むべき課題は、以下の点がある。
- 技術交流・人材育成プラットフォームの形成
- 地域限定盤「東アジアFTA」の創設推進
まず、北九州市の姉妹都市の仁川では、外国企業を誘致するために経済自由区域内で英語を公用化し公的機関で外国人学校を設立して外国語教育を行っているのに対し、北九州市では地域の発展戦略と複数外国語教育の関連性について広く論じられることはなく、韓・中両言語教育への取り組みは議論されていない。そのために、大学などの研究機関において地域研究を進めて東アジア地域をリードする人材を育成したり、日中韓の教育・文化交流を促進ために大学で教員・学生の交流を深めるプログラムを作るなどグローバルな教育を実施していくことが必要である。また、会員都市にある技術系の主要大学間で共同研究を行って、人材育成・交流だけでなく技術交流も域内で行って経済圏の発展につなげていく必要がある。
また、日中韓ではFTAは達成されていないが地方都市間での物流の流れがスムーズにいく仕組み(通関手続きの簡素化、コストダウン)を作り、FTAと同様の効果を生み出すことを目指すことが東アジア経済交流機構の課題となっている。
第三章 地域経済圏の今後の展望
環黄海経済圏は地域での取り組みだが、地方都市だけでは予算の確保や法制度の整備などの面において限界もある。また、環黄海沿岸都市のネットワークの中だけで地域交流を進めても、経済圏の中の一部の地域の産業が発展するだけで、経済圏全体の産業構造の高度化にはつながりにくいと考えられている。地域経済圏とは「国境を越えた地域交流・企業間連携」であり、経済発展のためには「国境を越えた産業集積」が必要である。
そして、「国境を越えた産業集積」を促進するために、地域産業を発展させることが重要であり、地域産業政策の実効性を高めるためには国の支援が必要である。
今後は、国及び地方(自治体)の2つのチャネルで経済交流を進め重層的な政策推進体制を整えていかなければならない。
第四章 政策提言
参考文献
- 渡辺利夫編 『東アジア市場統合への道』 勁草書房 2005年
- 中藤康俊著 『北東アジア経済圏の課題』 原書房 2007年
- 北九州市ホームページ (アクセス日:2012年1月21日)
Last Update:2012/2/8
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