北欧における男女平等
社会科学部
政策科学ゼミナール2年
一ノ瀬 梢
研究動機
2013年10月に世界経済フォーラムによって発表された「男女格差報告2013」によると、日本の男女格差は世界的にも非常に大きく、評価対象国136か国中105位、アジア圏内では24か国中19位と過去最低の順位であった。
一方、首位に立ったのは私の留学先だったアイスランドであった。また、2位以降続くのはフィンランド、ノルウェー、スウェーデンで、いずれも上位を占めているのは、北欧諸国ばかりである。
現地で生活していると、文化や生活様式は日本と全く異なるものの、男女平等という観点から見るとそれほどの違いはなかったように感じる。何が男女格差の要因となっているのだろうか。北欧諸国と日本の報告書結果、ジェンダー主流化政策を比較し、考察したい。
章立て
- 第一章 男女格差報告2013とは
- 第二章 北欧諸国と日本の比較
- 第三章 アイスランドのジェンダー主流化政策
- 第四章 フィンランドのジェンダー主流化政策
- 第五章 ノルウェーのジェンダー主流化政策
研究の概要
- 第一章 男女格差報告2013とは
男女格差報告とは何かについて説明する。
- 第二章 北欧諸国と日本の比較
「男女格差報告2013」に報告された北欧諸国と日本を比較する。
- 第三章 欧州における取り組み
- 第四章 アイスランドのジェンダー主流化政策
- 第五章 フィンランドのジェンダー主流化政策
- 第六章 ノルウェーのジェンダー主流化政策
第一章 男女格差報告とは
「男女格差報告」とは、国際的非営利財団である世界経済フォーラムが世界の経済、政治、教育、健康の4つの指標と14の副指標から男女間の格差を評価し、国別にランキングをつけたものである。
指標作成には、ILOやUNDP、またWHOなどの国際機関の調査データを使用している。この報告書は、2006年から作成され始め、今回で8回目の報告である。
第二章 北欧諸国と日本の比較
「男女格差報告2013」によると、軒並み上位に位置しているのが北欧諸国である。上位3か国について詳しく見ていきたい。
1位のアイスランドは、2009年以降5年間首位に位置し続けている。「経済活動の参加と機会」と「政治的エンパワーメント」の指標が改善したため、総合値が上がった。
2位のフィンランドは、「経済活動の参加と機会」のスコアがわずかに下がったものの、2位を維持した。
3位のノルウェーは、総合値が若干伸びたため3位にランクインした。
フィンランドとノルウェーは2か国間での順位の入れ替わりはあるものの、依然と高い順位を維持している。
上記3か国に共通していえることは、まず、識字率の高さである。
数十年前から男女ともに99〜100%の識字率を誇り、初等教育、中等教育のいずれにおいても男女同程度の教育が与えられている。高等教育においては、男女格差は覆り、今や高い技術を必要とする労働の多くを女性が担っている。ノルウェーとアイスランドでは1人の男性に対して1.5人の女性が、フィンランドでは1.23人の女性が高等教育を受けている。
次に、女性への選挙権の付与が早いことである。最も早いのは、1906年のフィンランド、次に1913年のノルウェー、そして1915年のアイスランドである。
対する日本は、105位と3年間低下し続け、過去最低の順位となった。これは、評価対象国136か国の中でもかなり低い順位に位置している。
欧州における取り組み
2000年代に入ってからは欧州地域の全般んでジェンダー予算の導入や実践に向けた動きが活性化した。例えばEUレベルでの動きとして2003年に欧州議会においてジェンダー予算に関わる決議が行われるなどジェンダー予算の導入や実践に向けた強い政治的コミットメントが形成された。
欧州でも北欧諸国において、社会や経済生活の全般にわたる「ジェンダー平等」が積極的に推進され始めたのは1970年以降である。具体的には女性就業率が約65〜80%にまで上ることや、夫婦間において育児分担が一般化されていることなどが挙げられる。北欧諸国の取り組みが本格化することを促した直接の契機は北欧理事会と北欧閣僚理事会のもとで行われた共同プロジェクトである。北欧理事会・北欧閣僚理事会とは、それぞれ1952年と1971年に設立された、本部をデンマークのコペンハーゲンにおく北欧諸国の議会・政府間における協調と協力を促進することを目的とした組織体である。現在デンマーク・フィンランド・アイスランド・ノルウェー・スウェーデンの5カ国と、グリーンランド・フェロー諸島・オーランド諸島の3 地域が加盟している。
ジェンダー主流化に関しては、北欧閣僚理事会が、2001〜2005 年を対象としたジェンダー平等に関わる北欧協力プログラムにおいて、経済政策分野にジェンダー平等の視点を導入することを重要な取組事項の一つとして取上げ、ジェンダー予算に取り組むことの重要性を強調した。そして北欧理事会加盟の5カ国で2004年から3年間にわたり、ジェンダー著さんの導入と実践を促進するための共同プロジェクトが行われることとなった。
しかし一方で北欧諸国が直面した共通課題もある。
参考文献
- World Economic Forum(2013)The Global Gender Gap Report 2013
- 内閣府男女共同参画局(2011)『北欧諸国における立法過程や予算策定過程等への男女共同参画視点の導入状況等に関する調査報告書』
- Statistics Iceland(最終アクセス日/2014/02/07)
Last Update:2014/02/07
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