「PSTNの終了」である。
PSTNとは、電話網のことである。現在、NTTの加入電話などのアナログ電話は、このPSTNを使って提供されている。
しかし、PSTNの要となる交換機が寿命を迎えようとしているのである。
固定電話離れなどの影響もあり、この交換機はすでに製造が停止されており、現在の交換機の寿命もあと10年と言われている。
また、利用者の減少に伴って空いた交換機を保管し、故障器と取り換えるという措置も取られているが、それでも2025年には限界を迎えると言われている。
NTTはPSTNの終了に伴い、「IP(インターネットプロトコル)網」への移行を発表している。
ただ、NTTは固定電話に関して毎年1000億円程度の赤字を計上しており、採算がとれていないのが現状だ。この赤字は、固定電話離れの加速に伴ってさらに増大すると思われる。
NTTは一度総務省に対して、ユニバーサルサービスの見直しを提案したが、結局「固定電話は可能な限り、維持していきたい。」と語り、IP網への移行後も当分は維持する意向を発表した。
総務省も、「当分の間、ユニバーサルサービス制度により維持していくことが適当」としながらも、制度の見直しの必要性にも言及している。
ユニバーサルサービスの見直しにあたり、直面するのは、過疎地や離島、高齢者への配慮の必要性である。
現在、携帯電話が利用できない集落は全国に約3240カ所あり、このような地域に住む人や、携帯電話を持っていない高齢者などにとって、現在の固定電話は欠かせないものである。
この問題に関して、社会科学・政策科学の観点から考察し、政策提言へとつなげていく。
「国民生活に不可欠な通信サービスである、加入電話(基本料)又は加入電話に相当する光IP電話、第一種公衆電話(総務省の基準に基づき設置される公衆電話)、緊急通報(110番、118番、119番)は、
日本全国で提供されるべきサービスとして、基礎的電気通信役務(ユニバーサルサービス)に位置づけられています。」
(総務省ホームページより引用)
「これらの電話のユニバーサルサービスは、NTT東日本とNTT西日本(NTT東西)が、法令に基づき、日本全国であまねく提供する義務を負っており、高コスト地域を含む日本全国で提供されています。」
(総務省ホームページより引用)
このように、ユニバーサルサービス制度とは、全国民が同じ基準で電話や緊急通報を利用することができる為の制度であり、その整備義務はNTT東西に課せられている。
さて、諸外国において、ユニバーサルはどのように捉えられているのだろうか。
まずは、基本電話サービス・緊急通報について。
これらは、各国によって内容は異なるが全ての国でユニバーサルサービスとされている。
一方、携帯電話などの移動電話サービスや、インターネットなどのブロードバンドサービスについて。
現時点では、これらをユニバーサルサービスと位置付けている国は存在しない。
したがって、現時点では諸外国においても日本と同様のユニバーサルサービス制度が採用されていると言える。
さらに、各国ともに、日本と同様にIP化の進展を踏まえブロードバンドサービスをユニバーサルサービスの対象とすべきかどうかについての議論が行われているのである。
例えば、スイスではブロードバンドサービスをユニバーサルサービスとして位置付ける動きが出ている。
〜今後の研究方針〜