2015年秋に、自転車と歩行者が衝突し、救急搬送される事故を見た。その光景を見て、数年前自分の祖母が自転車に乗っている際、トラックと衝突したことを思い出した。祖母は膝に後遺症が残り、長時間歩けなくなってしまった。自転車による交通事故は普段意識していないようであるが、実際は身近に起こりうるものである。調べてみると、後遺症が残ったり、死亡したりするケースも多くあり、大きな社会問題であることがわかった。
2015年6月には道路交通法が改正され、自転車利用に関する規制が厳しくなった。事故全体における自転車事故の割合は約20%であり、けして小さくなく、今まさに取り組むべき問題であると考えた。
そこで本論では、自転車事故を未然に防ぎ、その件数を減らしていき安全な社会を目指すことを目的として政府や自治体などがどのような政策を行っているのか、そして環境問題や東京オリンピックを控え、さらに需要が増加しそうな自転車の有効利用という二つの面で課題や問題点を考え、自転車事の安全利用と有効活用へと繋がる政策提言をしていきたい。
東京オリンピックを控えている現在、自転車による事故社会問題について自転車事故の現状を把握し、考察する。さらに2020年の東京オリンピック期間中の安全で快適な自転車利用や環境問題においての自転車の有効性についても考える。自転車の免許制度についてのメリット・デメリットを比較し検討した上で免許制導入の是非について考えていき、先進的な取り組みを実施している事例を通して、今後の安全な自転車利用と環境問題やオリンピックにおける有効利用につながるよう研究していく。
昨今、地球温暖化などの環境問題が深刻化していくにつれ、対策として公共交通機関や自転車の利用が推奨されている。自転車の利用が活性化する一方で、自転車乗車中の事故、特に自転車と歩行者の対人事故が大きな問題になっている。現在が自転車の安全利用における過渡期ともいえる。 警察庁によると自転車乗用中に起こった事故は事故総数では年々減少傾向にある。しかし、2012年には交通事故全体の約20%を占めるなど割合は増加している。自転車乗車中に起きた事故の相手当事者別の交通事故件数の調査では、対自動車や対二輪車では減少傾向にある対し、対歩行者では増加傾向にある。(※右の画像は「自転車事故の現状」より抜粋)
2014年自転車事故は約11万件発生した。日本で起こる全事故件数における自転車事故の割合は約2割と決して少なくない数である。また、自転車事故による年間の死者数は540人であり、単純計算で1日に1人以上が自転車事故によって亡くなっていることになる。
自転車が幼い頃から乗り慣れている生活の一部である人も多いだろう。日常の一部に毎日気を使って行動することは難しいことであり、そんな不注意から悲惨な事故が発生した。2008年神戸市の当時11歳の男子小学生が帰宅途中ライトを点灯し、マウンテンバイクで坂を下っていたところ知人と散歩していた女性に気付かず正面衝突した。女性は突き飛ばされて頭部を強打し、一命を取り留めたものの、今も意識が戻らないまま寝たきりの状態だという。裁判では少年が時速20〜30キロで走行し、少年の前方不注視が原因と認定され、事故当時はヘルメット未着用であったことなどから親の監督義務を果たしていないとして母親に約9500万円の賠償を命じた。自転車には保険加入義務がなく、いざ事故が起きたときに驚く事態となってしまったのだ。国内ではここまで大きな賠償額ではないにしろ、事故による裁判が年間何件も起きている。
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Last Update:2016/03/31
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