空き家問題について

−空き家対策特別措置法から考える−

政策科学ゼミナールT
 社会科学部学2年
 中村 太一



出典:空き家バンク制度|浜田市

研究動機

 きっかけは2点ある。
 まず1点目は2年ほど前に、私の家の敷地にある物置の屋根が崩落した。さらにその半年後、近所の牛小屋が燃えた。どちらとも共通して言えるのは、かなり古く大きな被害を被ったということだ。
 これに関連して古い建物の現状に興味がわいた。その後新聞やインターネットで調べていくうちに、現在空き家問題が大きくピックアップされていることでぜひそこに焦点を当てようと思った。またテレビ(NHK番組”あさイチ”)で空家について身近に話題になっていたことから、 一層親近感がわき、取り組んでみたいと強く思った。


研究概要

 空家の問題点や歴史背景、更にそこから現状の問題点の理由を究明していく。その後2015年に施行されたばかりの空き家対策特別法に着目していく。この法律施行の有用性を検討しつつ、 空家問題の一つである放火問題解決へと向け、最後に政策提言へとつなげる。

章立て

  1.  第1章 空家の特徴と定義
  2.  第2章 空家増加による問題点
      自然的要因、人工的要因を挙げていく。
  3.  第3章 空家増加にある背景と理由
      空家の歴史的変遷
      なぜ増加していったかの理由
      現在の主な空家増加の要因(特に都市に注目して時代前後中心とした統計データを基に分析する。)
  4.  第4章 空家対策の今までの対策
      空家の管理、空家の転用、空家税など
  5.  第5章 空家問題の新たな対策
      空家対策特別措置法
  6.  第6章 空き家対策特別措置法の発展
      空き家対策特別法を使って、新たな打開案を出して、その有用性を検討する。
  7.  第7章 政策提言
      前章の結果を踏まえて、政策提言を行う。


第1章 空家の特徴と定義

 空家といっても一軒家だけではない。
マンションやアパートの一室も、人が住んでいなければ空家としてくくることができる。  それを踏まえたうえで次に空家を用途別に区分していきたい。
 まず大きく分けて所有者がいるか、いないかの2つに大きく分けることができる。更に所有者がいる空家に関しては、3つにわけることができる。まず第1に賃貸用の空き家、次に売却用の空き家、そして最後に二次的別荘と呼ばれるものだ。  これはいわゆる賃貸用でもなく、売却用でもない空家を指す。特に今問題となっているのは、所有者がいない空家が増加しており、それが原因で社会に悪影響を及ぼしている。以下に代表的な問題を挙げていく。

第2章 空家増加による問題点問題

空家問題は@倒壊、A放火、空き巣、B管理不徹底、C景観悪化が挙げられる。
  まず@だが、これは屋根や、建物自体が崩れることで、その家の住民の生命を脅かす危険性、更には付近の住民にも被害が及ぶ可能性があるため、懸念される。
 次にAは主に犯罪の温床としての問題があり、それが治安の悪化につながってしまう。
  そしてBだが、これは特に空家の所有者がいない場合が多い。空家の敷地に植えてある木々が、隣家に伸びてしまったり、下水道の悪臭が広がったりしたりとの問題点がある。
 最後にCであるが、これは例を挙げると観光客が街に来た時、落書きされている空家を見てしまうとしたら、  その人たちは訪れた街について、悪い印象を持ってしまう。
以上に挙げたように空家は様々な問題を引き起こし、厄介そのものである。しかし現在空家は増加しているのが現状だ。次の章では現在の空き家状況と、なぜ空家が増えているのかのメカニズムについてみていく。


出典:空き家・空地の問題点ーNPO法人空き家センター


出典::空き家・空地の問題点ーNPO法人空き家センター

第3章 空き家増加にある背景と理由

 なぜ空き家が増加するかの背景に大きく関連することに空き家の処理が大きく関係する。空き家の処理の仕方として、相続するか、しないかで大きく分かれる。
 まず相続する場合の話であるが、実際相続をする場合は少ない。なぜなら今の若者は、マンションに住んでしまうからだ。一軒家だと維持費や固定資産税が多くかかってしまうからだ。
 次に空き家を相続しない場合の話だが、これは売却と解体との2種類に分類できる。しかしどちらとも現在難しい。
なぜなら売却では地価の下落で不動産会社が買ってくれない。建物は10年たつと価値が半分になることと、新築志向で顧客が少ないためだ。
 では解体の場合はどうか?まず解体費が空き家の規模によるが、100〜200万かかる。簡単にはできない金額だ。たとえできる余裕があっても、更地(建物が立っていない土地)は 宅地(建物が立っている土地)の6倍固定資産税が高くなってしまう。
 以上のように処理しにくい現状に日本は直面している。
 では空き家の歴史的なメカニズムとは何か?空き家増加のきっかけは高度経済成長期だ。当時は景気がうなぎのぼりであり、そのため富を持つことは当たり前であった。 もちろんその富の一つとして、住宅、つまりマイホームがあった。当時な考えは働くことで、お金がたまり、最終的に車やマイホーム(一軒家)を購入して、家族を幸せにする。という風潮が存在していた。 そしてそれらを、子供たちに引き継いでもらおうという意図が全体的にあった。そのため住宅の需要は非常に多く、建設会社はどんどん住宅を建築していった。その結果今では多くの住宅が散見される。
 しかし現在そのような風潮はない。なぜなら当時の子供たちは、今となっては固定資産税が高く、維持がめんどくさい一軒家には住もうとはせず、都会近くのマンションやアパートの一室に住む傾向が一般的だ。

第5章 空き家問題の新たな対策

今までの対策と新しい対策の大きな違いは、政府が所有者不明の空き家を勝手に撤去できるようになったことだ。それを可能にした法律は昨年5月に施行された空き家対策特別措置法だ。
ではここから空き家対策特別措置法(以後、特措法と記す)について説明していく。
<目的> 適切な管理が行われていない空き家が、倒壊や火災等で近隣の住民に悪影響を与えることを防ぐため。
<詳細> 自治体や政府が危険空き家(人体に危険、衛生上危険、景観上危険)と判断した場合、特に政府は空き家管理者に改善指導、勧告、命令、強制撤去と順々に権限を発揮できる。
<費用>特定空き家に認定されると、固定資産税が4倍近く値上がりして、いずれ更地より高くなってしまう。空き家撤去を促進。 <実施例>昨年の10月に横須賀市で空き家特措法に基づき、政府によって空き家が撤去された。
老朽化により、付近の住民に苦情が出ると政府が判断したため、政府主導の行政執行という形で行われた。


参考文献


Last Update:2016/3/21
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