災害とメディア

〜多くの命を救うために〜

政策科学研究ゼミT
社会科学部2年
宮本直毅

研究動機

 筆者は熊本県出身であり、2016年4月14日に発生した熊本地震を家族や友人が被災した。その際、食料や飲料水などのような支援物資や救助依頼の情報などが錯綜する様子を目の当たりにした。
 政府の災害防止策としては、津波に対する防波堤の設備など一時災害に対するものが多く二次災害に対するものは少ないように感じられる。今回の熊本地震は東日本大震災と比較して一時災害による被害者は少なかった。
 しかし、熊本という本来地震が少ない場所にあったということもマイナスに働き、地震に対する備えが全くできていなかったため、二次災害が起きた。
 洪水・台風・地震・火山噴火というように、世界でも有数の災害大国の日本において、緊急事態に際して多くの人に迅速かつ正確な情報を伝える手段はないか?それは、世界の災害時にも役立つのではないか?
 そこで、筆者は、近年使用者が増加しているスマートフォンに注目した。スマートフォンのアプリに注目した。多くのユーザー数を持つFacebookやTwitterというようなソーシャルメディアを活用することはできないか。
 テレビ・ラジオ・新聞といったマス・メディアと、スマートフォン・パソコンなどのソーシャルメディアの両者を使い、支援物資や被害状況などを伝えるネットワークを作り上げることができれば、二次災害を防ぐことができると考えた。
 その方法を模索していきたい。

章立て 


第一章 現代におけるソーシャルメディアとマスメディアの定義と役割

現代には二つのメディアが存在すると考えられている。それがソーシャルメディアとマスメディアである。マスメディアとは主に明治時期より発達し始めて、戦時中や戦後復興の際にも
 使用されたテレビ・ラジオ・新聞・雑誌といった大衆媒体の通称である。一方でソーシャルメディアとは、ITが発達し始めた1990年代より活発になり近年急速に普及してきているパソコンやスマートフォンのことを指す名称である。
 その特徴としては以下の点に分けられる。

マスメディアの特徴(ポジティブ面)
・大量発行による情報発信
・情報収集に基づいて発行されるため正確性が高い

マスメディアの特徴(ネガティブ面)
・一方通行による情報の発信
・情報発信までの所要時間が長い

ソーシャルメディアの特徴(ポジティブ面)
・情報を迅速に伝えることができる(リアルタイム性)
・お互いに情報を共有することができる(インタラクティブ性)
・拡散されるまでの所要時間が短い

ソーシャルメディアの特徴(ネガティブ面)
・誰でもどこでも情報発信できるため情報の正確さに問題あり
・デマなどによる誤った情報によって左右されることがある

 以上のように、マスメディアとソーシャルメディアには、良い点・悪い点が存在する。実際に、東日本大震災や熊本震災を見てみると、お互いの良い部分と悪い部分が如実に表れていた。
 互いの良い部分と悪い部分を相互補完することで災害に対する二次災害を減らすネットワークを作り上げることができるのではないか。


第二章 過去の震災時に起きたソーシャルメディアの活用例

 ここでは、東日本大震災でソーシャルメディアが活用された例を紹介したいと思う。主に震災で活躍したソーシャルメディアのアプリとしてはTwitterとFacebookである。この二つのアプリは若者を中心に多くのユーザーがおり震災時にとても役に立った。

・インフルエンサーの存在
インフルエンサーとは、influence(影響を与える)からとられているもので、主に、著名人や公式アカウントといった、フォローの数と比較してフォロワーの数が圧倒的に多いアカウントを指す。
 東日本大震災の時には、堀江貴文氏や津田大介氏というような著名人が、安否確認などの情報をフォロワーから集めて再発信することで、多くの人に情報を拡散することができた。

・Googleのパーソンファインダー

 大手情報検索エンジンサイトGoogleが、パナマ沖震災の時に開発したサイト。人物を特定することができる情報を入力することで災害時にその人の安否を確認することができる。
 世界に数多くのユーザーを持ち、世界各国の言語に翻訳されているGoogleはアクセスもスムーズで東日本大震災の時も大いに役立った。


第三章  緊急地震速報の情報拡散方法

 緊急地震速報とは、政府が行う巨大地震が起こった際の情報拡散システムである。政府がおこなうため情報の正確さとさらに震災防止のために迅速な情報拡散が行われる。被災者に情報を迅速かつ正確に拡散することができる手段だと思い調べてみた。

緊急地震速報

 国土交通省気象庁が行うシステム。震度4以上の震災を感知したとき、パソコン・携帯電話に地震発生を伝えるメール
を自動的に送る。携帯電話ではau・docomo・ソフトバンクの大手三社が参加しており携帯電話を持つ人々には確実に情報発信することができる。



出典 docomoホームページ(https://www.nttdocomo.co.jp/service/areamail/)

 上の図のような形式で行われている。気象庁の感知器で地震を感知するとエリアメールセンターに情報が行きそこから各個人へ情報が伝わるようになっている。
 このエリアメールセンターのようなものを作ることができれば、より情報の伝わりが早くなるのではないか?

第四章 ソーシャルメディアとマスメディアの融合

・UstとNHK

Ustとは、ニコニコ動画のようにストリーミング放送を行うことのできるシステム。ストリーミング放送というのは動画や音声を一部受信してその受信したものからどんどん流していくという放送方法のことで音声や動画をほぼ同時刻に流すことができるというメリットがある。
東日本大震災の時に、ある少年がテレビのNHK放送に映っていた津波の映像をそのままUstに流したことでほぼ同時刻に東北地方で起きていた津波や震災の映像を日本各地や世界各地に放送した。それを受けたNHKはその少年の行動を引き継ぎストリーミング放送を続けた。
これはソーシャルメディアのリアルタイム性とマスメディアの信頼度の高い情報を組み合わせた事例だと思われる。

・特務機関NERV

特務機関NERVとはもともとは新世紀エヴァンゲリオンに登場する機関。その機関名を使ったTwitterのアカウントがある。
そのアカウントは先ほども述べた緊急地震速報や気象庁の災害情報をそのままツイートすることでたくさんの人に情報を拡散することができる。2017年2月6日現在で約40万人のフォロワーが存在しており一度のツイートで40万人に情報を拡散することができる。
さらにTwitterにはリプライと呼ばれる返信機能も存在するため、この特務機関NERVはインタラクティブ性・リアルタイム性とマスメディア融合事例だと思われる。


第五章 今後の方針

・マスメディアとソーシャルメディアの融合事例をもっと探す。
・ソーシャルメディアが日本よりも普及している欧米に注目する
・熊本震災で活躍したDISAANA(ディサーナ)について調べる。
・ソーシャルメディアの弱点である情報の正確性を向上させる方法を考える.


参考文献


Last Update:2017/02/28
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