東京における電気自動車の普及

ー公共交通機関の全面電気自動車化ー

上沼ゼミT
社学2年 藤崎利応



出典:経済産業省http://www.meti.go.jp/policy/automobile/evphv/

はじめに−研究動機−


章立て

  1. 研究の全体像
  2. 環境問題について
  3. 電気自動車にする理由
  4. 「CASE」とはなにか
  5. 自動車産業の構造変化
  6. 東京で普及させるメリット
  7. モデルケース
  8. 今後の課題

1.研究の全体像

 この研究では、環境問題に対する解決策としての自動車社会のガソリン車脱却および電気自動車の普及を想定し、公共交通機関から電気自動車へ転換していくことによる、市民単位への電気自動車化を促すことを目標に考察を進めていく。

2.環境問題について

 環境問題は、人類社会にとって最も解決しなければならない問題だ。今や世界の6人に1人が環境汚染で死亡する時代である。その最大のリスク要因は空気汚染で、自動車の排気ガスや、工場の排気ガス(pm2.5など)が主な要因で、これからの自動車社会には、走行時に有害物質を排出しない自動車の生産が求められる。

3.電気自動車にする理由

 走行時に有害物質を排出しない自動車を、ZEV(Zero Emission Vehicle)と呼ぶ。電気自動車や燃料電池車がこれに該当する。燃料電池自動車でなく電気自動車にすべき理由は、普及に際してのハードルが電気自動車のほうが低いからである。  燃料電池自動車は、水素を燃料電池に与えることにによって発電し、それをもとにモーターを動かし走行する。したがって、燃料として使用する水素を供給する水素ステーションを整備しなければならない。水素ステーションの設置費用は約5億円といわれており、一般的なガソリンスタンドのおよそ5倍ものコストを必要とする。また、燃料電池が高額なため、車両価格も高額になってしまう。そのため、充電ステーションの整備が容易で車両価格も燃料電池自動車ほど高額でない電気自動車が最もZEVの中で現実的であると言える。

4「CASE」とはなにか

 「CASE」とは、元々2016年のパリモーターショーで、ドイツのダイムラー社のCEO、ディーター・ツェッチェ氏が発表した中長期戦略の中で提唱した造語で、C:Connected(接続性)、A:Autonomous(自動運転化)、S: Shared/Service(シェア/サービス化)、E: Electric(電動化)の頭文字を組み合わせたものである。これらの4つの項目が、自動車産業の構造変化をもたらすと言われている。したがって、電気自動車の普及について考えるには、「CASE」と関連付けて考えていく必要がある。

5.自動車産業の構造変化

 「CASE」による大きな変革を迎えている自動車社会だが、具体的にはどのような変革が起きるのだろうか。  例えば、人々の自動車の持ち方が、「保有」から「利用」へ変わることが予想される。自動運転技術が発展すれば、カーシェアリングが無人タクシーのような感覚で使うことが出来るようになる。維持費やランニングコストが従来のガソリン車に比べて安いといったメリットや、電気自動車の航続距離の短さ、充電時間の長さなどのデメリットを考えると、「利用」の形態と電気自動車の相性は良く、これらはセットで普及していくだろう。  また、自動運転による様々なサービスが展開され、企業のビジネスチャンスは拡大していくことが予想される。従来は車は運転するものであったが、乗るだけで目的地に到着するのであれば、人々はより空間としての自動車の価値を見出すようになるだろう。そうすれば、家電メーカーや家具メーカーなど、様々な業界と複合して自動車を生産するようになり、多様なアクターが参加する自動車社会が形成される。また精密機器メーカーによる蓄電池の製造によって、自動車メーカー以外にも自動車を生産することが出来るようになり、産業構造に大きな変化を及ぼすことが予想される。

6.東京で普及させるメリット

 交通量の多い都心部でバスやタクシーを電気自動車にすることで、環境汚染防止に貢献することが出来る。また、市民の保有物ではなく公共交通機関から電気自動車に転換することは、行政と直結しているため比較的容易であること、またそれに伴う充電ステーションの設置によって、市民単位で電気自動車が普及した際に活用することがメリットとして挙げられる。  また、人口密度の高い東京では、カーシェアリングを普及させやすく、事業としての成長も見込むことが出来ることができる。都心部では駐車場代などの維持・保有費用が高く、定額で都度利用することの出来るカーシェアリングは効果的である。公共交通機関とは違い、すぐに電気自動車に転換していくことは難しいが、前述したようにカーシェアリングと電気自動車の相性を鑑みて、行政による公共交通機関と並行して、カーシェアリングで使用される自動車が充電することを想定した充電設備の整備を行うことにより、電気自動車の普及率を高めて行くことが出来ると考える。  国際的に先行して普及に成功すれば、間接的な利益も見込むことが出来る。それは、電気自動車社会のロールモデルとなることだ。ロールモデルとして首都東京の自動車社会を形成することが出来れば、他国へのインフラ整備や、海外事業の参入が容易になる。将来自動車社会が電気自動車化するのは確定していて、日本はその先陣を切っていくパイオニアになるチャンスを無駄にしてはいけない。

7.モデルケース

 国際的なモデルケースとして、オランダのアムステルダムを挙げることが出来る。アムステルダムでは、乗用車、タクシーやトラックなどの電気自動車の導入を計画している市内企業に対する助成施策を展開しており、企業は電気自動車の購入に際し、乗用車1台につき5000ユーロ、タクシーにつき1万ユーロ、トラック1台につき4万ユーロの助成金を申請することができる。また、ヨーロッパには路上駐車の文化があり、街中の至る所に駐車エリアと普通充電器のセットがあり、充電を行うことが出来る。  イギリスでは、個人の車をカーシェアリングするシステムであるライドシェアが盛んで、個人が専用のサイトに登録し、自分の車をカーシェアリング用として貸し出すことができる。これによって、利用者、運営している企業の両者に利益が生まれる。  ドイツのベルリン市内では、「DriveNow」というサービスが展開されていて、「半径500m以内で車が見つかる」を謳い文句に、ベルリン市内のどこでも乗り捨てすることが出来る。

8.今後の課題

 研究方針や政策のイニシアチブが定まってきたので、自動車の開発競争においてどのような経緯があったうえでの過去と未来なのか、政策の流れを分析すること、モデルケースがどのような経緯で採用されてきたかなどを掘り下げて研究を進めていく。

参考文献


Last Update:2019/1/31
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