今日、日本の労働者不足や生産年齢人口の減少、少子高齢化などをよく耳にする機会が増えた。2050年には、人口が1億人を下回り、全体のうち、65歳以上が38.8%に上ると予測されている。その中で、生産年齢人口はわずか51.5%である。
このような予測に、個人的に大変不安を感じた。このように、労働者不足が不安視されるが、バイトや買い物などの日常生活を送っている中で、外国人と会わない日が無いと断言できるほどに、現在、外国人労働者は、日本に浸透してきている。
筆者は、外国人労働者の増加が、日本の深刻な生産年齢人口不足に大きな助けになるのではないかと思った。また、求められる職や、逆に労働者数が過剰な職などを見極めることができたならば、これからの就職や世間のニーズを把握して、新たな製品やサービスの提供の一助になるのではないかと考えた。以上が、筆者がこのテーマを選択した動機である。
この研究の意義は、まず、日本のGDPの増加に伴う経済の回復、次に、外国人労働者の活用による労働者不足の改善、さらに、女性の社会進出や育児環境の未整備に伴う少子化、生産年齢人口の減少の解決までの、一時的時間稼ぎを見込むことができる。
現在、日本は、少子高齢化に伴って、上図のように赤色の高齢者の数は年々増加しているが、緑色で表される18歳から65歳までの生産年齢人口と、青色で表される若年層の、深刻な減少に直面している。
また、今日、女性の社会進出が注目されているが、上図のように、男性の潜在的労働者と就業率に、差はあまり見られない一方で、女性では、潜在的労働者と就業率に差が見られる。これは、出産や育児、介護などの理由から働きたいが働けないという女性が、男性に比べて多く存在していることを表している。加えて、20代後半から40代後半にかけて、就業率が落ちている(M字曲線)ことを見ると、女性の社会進出は、望む者は多いがなかなか働けない上に、社会進出したとしても、妊娠出産に伴う一時的リタイアから、子育て環境の都合上復帰できないというのも現状である。
業種別に見ると、事務や運搬、清掃などは、倍率1.0倍を割るほど人材は豊富である一方で、保安を除く、サービス、専門・技術的職業、介護、輸送、建設の分野において、特に、人手不足が顕著である。以上が、日本の労働者不足の全体像である。
図のように、2008から2017年にかけての10年間、外国人労働者は、着実な増加をしている。日常生活に目を向けてみても、コンビニや飲食店など様々な場面で、外国人労働者が活躍しているのを目にする機会が増えた。
しかし、現状は、外国人労働者が増えて、労働者不足が解消された、というわけでは決してない。現在、我々がよく目にする外国人労働者は、留学生や技能実習生などの、働くことを目的に日本に来たわけではない外国人の方々である。彼らには、最大5年間の滞在や一週間のアルバイト時間、給料などに制限がある。2017年10月時点でも、日本における外国人労働者の数は128万人であるが、このうち、就労ビザ、つまり働くために日本に出稼ぎに来ているのは、わずか18.6%である。これが外国人労働者の現状である。
今日、「入国管理法改正案」が閣議決定された。この決定に伴って、外国人の働き方がどのように変わるのかを見ていく。
現在、外国人労働者は、留学生、技能実習生、高度な人材、の3つに分けられる。今回、この3つに加えて、新たに、特定技能1号と2号の2種在留資格が設けられる。具体的に見て行くと、建設業、造船・舶用工業、自動車整備業、航空業、宿泊業、介護、ビルクリーニング、農業、漁業、飲食料品製造業、外食業、素形材産業、産業機械製造業、電子・電気機器関連産業の、14の業種での単純労働含めた就労を認める「特定技能1号」と建設業、造船・舶用工業、自動車整備業、航空業、宿泊業の5つの業種で家族帯同や在中期間更新が可能な「特定技能2号」という在留資格が新設される。
現在、図のように、アジア諸国の中では日本は、比較的人気な国であり。「選ぶ国」の立場である。しかし、ベトナム当局は、送り先を中東や東方にも広げる方針を固めている。現在、ベトナムでは高齢化や生産年齢人口の不足には直面していないが、10年後にはベトナムでも高齢化が進むと言われている。それに伴って、ベトナム国内介護などの需要が増加するのに加え、日本の労働環境の悪さ、例えば低賃金やパワハラ、職種の制限、転職の不自由性などが要因となり、日本は今後「選ばれる国」となることは必須である。
現在、10年を長期滞在の中に含めないとすれば、日本に長期滞在できる外国人労働者は、特定技能2号と弁護士や医師、研究者といった、高度な人材に限られる。つまり、今回の法案で外国人労働者の受け入れ枠を拡大したものの、最大10年後には母国に帰国させなければならないため、最終的な労働者不足の解決には繋がらない。したがって、特定技能2号の職種の拡大が望まれる。それは使い捨てにしない国に繋がって行く。さらに「選ぶ国」から「選ばれる国」となって行くことを受け入れ、労働環境や転職制度の改正による外国人労働者に「選ばれる国」としての整備が必要である。
その点では、海外の政策を参考にする必要があるかもしれない。ドイツは、移民生活を進めた結果、「社会統合政策」をしっかりと進めなかったため、社会から阻害された人々が犯罪組織に巻き込まれていくなどの問題が多発してしまった。
アメリカは、トランプ政権以降、揺れ動いてはいるものの、基本的に移民を受け入れて、社会統合政策を行っている。例えば、英語を話せない外国人の子供に対する、受け入れ態勢がきちんと整備されていたりする。
一方、東南アジアで経済成長が著しいシンガポールは、外国人の労働力に大きく依存しているのにも関わらず、労働ビザの有効期限はたったの2年である。最長10年まで延長できるが、家族の帯同は認めていない。つまり、シンガポールは、外国人を短期的な労働力と考え、働きにくる外国人もシンガポールを稼ぐ場として割り切っている。
日本の潜在的労働者の中には、様々な理由で働けない人がいるが、一方で、引きこもりやいわゆるニートなどの、働けるが働かない人も働かせることで、就業率増加に伴う労働者不足解決になるのではないか?とのコメントを頂いたので、外国人労働者だけに頼るのではなく、日本国内での活用できる労働力にも少し注意を向けて研究していこうと思う。
また、外国人の社会統合性は、外国人と自国民の結婚率により確認することができるとの意見を頂いたので、結婚率の高い国の社会統合政策を今後中心的に調べ、また、社会統合政策に失敗した国々とも比較して、何が日本に最適な政策なのかを調べ、提言して行きたい。
Last Update:2019/02/07
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