観光まちづくり
-長野県松本市の観光まちづくり-
上沼ゼミT
社学2年 篠崎桃子

「国宝松本城」、出所=ウォーキング松本(2018.4.10)
はじめに-研究動機-
出身地である長野県松本市は豊かな観光資源に恵まれているのにも関わらず、少子高齢化が進み、活気が失われていると感じることがしばしばあった。そこで、地域資源の価値化や市民の連携により観光をさらに盛り上げ、かつ地域活性化に繋げることができるのではないかと考えた。
章立て
- 松本市の現状
- 観光まちづくりとその成功事例
- 松本市浅間温泉の取り組み
- 今後の研究方針
- 参考文献
松本市の現状
・少子高齢化の現状
近年、近年出生率が死亡率を下回っている。

出典=松本市オフィシャルウェブサイト
・社会動態
転出入者の総数は大きく減少しているが、これは松本市に限らず県全体や国でも同様の傾向が見られる。転入出の詳細を見ると、10 代の若者が多く転入している一方、 20 代前半では多くの者が転出しており、進学で転入してきた若者が、就職において市内に定着していないことが考えられる。 これが市内の出生率の一因となっていると考えられる。したがって、就職の受け皿となるような雇用の創出や、住みたいと思えるまちづくりの必要性がある。

出典=松本市オフィシャルウェブサイト
・観光入込客数
市内観光入込客数は減少傾向。松本城の入場者数は増加し、松本を代表する観光地として定着しているが、それ以外の観光地の入込客数はほぼ横ばいか減少傾向。特に美ヶ原高原や上高地での減少が著しい。理由としては不景気などから全国的に観光入込客数が減少しており、その傾向のなかで観光資源をアピールしきれていない、上田市などの周辺都市と観光のストロングポイントが似通っている松本市が他の代表的な地域に観光客を取られていることが考えられる。
・松本市が提唱するスローガンや政策
少子高齢化は日本全国規模で起こっている現象なので、無理に是正しようとはせず、量から質へと発想を転換し、市民一人ひとりの「いのち」と「暮らし」を大切に考え、誰もがいきいきと暮らせるまちづくりに向け「健康寿命」の延伸を目指していく「健康寿命延伸都市・松本」を将来の都市像としている。しかしこれを目標にすることで転入者の増加・転出者の減少に繋がると考える。
・現在の観光面での課題
現在松本市が抱えている課題として、少子高齢化によって跡継ぎが見つからず放置された店の存在、多様化する観光者ニーズへの対応ができていないこと、ツアーなどではない、街そのものを「体験する」観光への需要の高まりによる従来の観光体制の限界などがある。
観光まちづくりとその成功例
・観光まちづくりとは
地域の持続的発展に向けて、観光地づくりとまちづくりを一体的に行う考え方である。大切なのは、住民参加のもと地域が主体となってこのような取り組みを行うことである。住民自らが誇りをもってまちづくりをすることで、そこを訪れる来訪者の満足度も高い状態が維持される。
・「観光まちづくり」の成功例
歴史的観光資源を活用した観光まちづくりとして、兵庫県篠山市の空き家活用と地域再生の取り組みがある。一般社団法人ノオトが、地域経済活性化支援機構等が設立した観光マザーファンドや但馬銀行との協調支援により、(株)NOTEリノベーション&デザインを設立し、篠山地区の古民家を一体的に改修するとともに、起業家や事業者を誘致し、多くのホテル、レストラン、カフェ、工房などが立ち並ぶ魅力的な城下町等の街並みを実現。20名以上の移住者、50名近くの雇用を創出。

出典=「歴史的資源を活用した観光まちづくり成功事例集」
松本市浅間温泉の取り組み
・浅間温泉とその現状
浅間温泉とは、松本市の中心部から少し離れ、駅から出ているバスで約20分ほどで着く昔ながらの温泉地である。「松本の奥座敷」と呼ばれ、1300年の歴史を持ち、日本書紀にも登場している。湯の質も良く、正岡子規や与謝野晶子など、明治以降の文人が多く訪れた。現在は少子高齢化による跡継ぎ不足で大きく衰退している。
・現在浅間温泉で行われている取り組み(1)そら屋
そら屋とは、長野県松本市で空き家の利活用に取り組む、設計士と商店主のチームである。空き家やリノベ物件の見学を含む街歩き企画、空き家情報をシェアして活用方法などを語り合うラフな交流会を改正しており、実際にこの取り組みによって再活用が実現した空き家もある。
最近は浅間温泉にフォーカスし、不定期で活動している。

出典=そら屋
・空き家リノベーションの問題点
空き家リノベーションがスムーズに進まないのは、持ち主との交渉が上手くいかないためである。主なものとして、近隣トラブル・土地の形の境界線トラブル・相続の問題・売却価格が安いこと・よその土地の人が入ってくるのをよく思わないことなどがある。これらの問題にどのように対処するべきか今後考えていきたい。
・現在浅間温泉で行われている取り組み(2)外国人向け素泊まり施設「HOTEL&SPA『FA(U)N!MATSUMOTO』」
従来は歴史ある旅館だったが、跡継ぎがいなくなったことをきっかけに、温泉はそのままにリノベーション。宿泊施設と和食バルが併設する形で、宿泊施設は1泊/1980~宿泊可能。和食バルは宿泊者以外も利用でき、「高くて食事付き」という従来の旅館のイメージを払拭し、気軽に泊まることができるのが特徴である。

出典=FAN!MATSUMOTOホームページ
今後の研究方針
・空き家問題について詳しく調べる
・先行研究を調べる
・上田市など、近隣の都市との比較をし、松本市ならではのストロングポイントを発見する
参考文献
- ウォーキング松本「松本観光の定番&人気スポット 松本城」http://walking-matsumoto.net/sightseeing/all-of-matsumoto-sightseeing(最終アクセス2019/01/18)
- NRIニュース「地域づくりの新しい考え方『観光まちづくり』」http://warp.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/284117/www.nri.co.jp/opinion/chitekishisan/1999/pdf/cs19990902.pdf(最終アクセス2019/01/18)
- 日本総研「地方創世のための観光まちづくり」https://www.jri.co.jp/page.jsp?id=26319(最終アクセス2019/01/18)
- 松本市オフィシャルウェブサイト「超少子高齢型人口減少社会における松本市の人口推計」https://www.city.matsumoto.nagano.jp/shisei/sousei/jinkosuikei-sogosenryaku.files/jinko-suikei.pdf(最終アクセス2019/01/18)
- 松本市オフィシャルウェブサイト「『健康寿命延伸都市・松本』地方創生総合戦略」https://www.city.matsumoto.nagano.jp/shisei/sousei/jinkosuikei-sogosenryaku.files/senryaku-2.pdf(最終アクセス2019/01/18)
- 松本市オフィシャルウェブサイト「松本市観光ビジョン」https://www.city.matsumoto.nagano.jp/miryoku/matsumoto_tourism/seisaku/vision.files/kankouvision.pdf(最終アクセス2019/01/18)
- 内閣官房 歴史的資源を活用した観光まちづくり連携推進室「歴史的資源を活用した観光まちづくり成功事例集」http://kominkasupport.jp/file/case_studies_2018_2.pdf(最終アクセス2019/01/18)
- そら屋http://soraya-matsumoto.com/(最終アクセス2019/01/18)
- FAN!MATSUMOTOホームページhttp://fan-matsumoto.com/(最終アクセス2019/01/18)
Last Update:2018/01/28
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