日本人の資産運用
−株式投資が国と個人に与える影響−
早稲田大学社会科学部2年
上沼ゼミT 須澤弘貴
RRice「ワールドマーケット株価チャートの推移」:出所:photo AC
章立て
- はじめに
- 株式投資とは
- 注目を集めるESG投資
- 今後の方針
第1章 はじめに
日本において、資産運用の重要性が叫ばれるようになっている。所得に変化が無いのにも関わらず、「老後2000万円問題」と言われるように将来に対して貯蓄が求められているからである。
国税庁の民間給与実態調査によると、日本人の平均年収は約441万円(2018年)で20年近く変わっていない。名古屋商科大学経営大学院(MBA)教授である植田統(2020)によると、日本の?平均賃金は加盟国の35カ国中19位という水準である。
給与は横ばいにも関わらず、老後に必要な資金は以前より増えている。少子高齢化が進み年金受給者が増えているのに、保険料を収める世代が減っているのである。つまり、現役の負担が大きくなり保険料が増えるか、年金支給額が減ってしまうかという問題に直面してしまうのである。フィナンシャルプランナーの中村健司(2020)によると、1999年度における国民年金の支給額は年額80万4200円であったが、2019年度の国民年金の支給額は78万100円だとしている。
手元に残る現金が減り、将来の不安が拭えない中で、どのようなライフプランを形成するかということを考えたときに、資産運用という行動を挙げることができる。
本稿筆者は、資産運用の一種である株式投資についての研究を行う。国がどう動けば日本の株式投資が活発になるのか、活発になったことで国と個人にどのようなメリットが与えられるのかということについて研究し考察したい。
第2章 株式投資とは
はじめに、株式投資とはどのような制度であるのか説明したい。
株式は企業が発行する金融商品のことであり、企業は資金調達の目的で株式を発行するのである。株式投資のメリットとしては、企業はその資金を返済する必要が無いこと、所有者としては配当と呼ばれる企業の利益を得ることが挙げられる。通常、銀行などから資金調達を行った場合は、利子を付けて債務者に返済することが求められる。そのため、銀行などからの資金調達が増えれば増えるほど、返済額が大きくなり、結果として倒産のリスクが高くなるのである。しかし、株式投資は、出資という形態を取っているので、企業はその資金に対して返済の義務がない。たとえ企業が倒産したとしても、返済をする必要が無いのである。株式を発行し資金を調達することで、企業は、さらなる事業の拡大を進めることができるのである。
株式を所有した人は、配当と呼ばれる権利を手にすることができる。配当とは、株式所有者に対する企業の利益の一部を分ける行為である。所有している株式の企業の業績が、伸びれば伸びるほど配当金が大きくなる可能性があり、株式を持っているだけで財産が増えるのである。さらに、株を発行した企業の需要が高くなるほど、株式の値段は上がる。多くの人が、その株式を所有したいと考えるようになるのである。結果として、最初に買った値段よりも株を売ったときの値段のほうが高くなり、株式を売買することで利益を生む可能性も存在するのである。
しかし、そんな株式にもデメリットは存在する。それは、経営権を奪われる可能性と、元本割れのリスクがあることである。元々、株式は、企業の一部を市場に分配することで資金を調達する手段である。そして、株式を所有する人は、その会社の経営に対して口を出すことができる。もし、市場に流通している株式が一部の人によって保有された場合、その人が経営に対してかなりの意見を挟むことができるのである。すなわち、自由な経営ということができなくなるのである。
先に、株式の売買で利益を得たと述べたが、全く反対の効果を生んでしまう場合もある。株に人気がなくなり、買った時より売った時の時価が低い場合がある。その場合、売却しても損にしかならないのである。
ただ、株式投資は個人の利益を生み出すだけでなく、企業の経営活動にも効果がある投資活動である。日本企業が積極的に事業投資をできるようにするためにも、国民一人ひとりが日本企業を支える必要があるのである。
第3章 注目を集めるESG投資
株主は、財務諸表やマーケットの動きを見て投資先を決めている。しかし、近年、企業が環境問題に対してどのように取り組んでいるのかということを重視する、ESG投資が話題になっている。
ESG投資とは「環境(Environment)」、社会「(Social)」、企業統治「(Governance)」の頭文字を取った、財務以外の観点から投資をする手法である。2006年に、国連のアナン事務総長(当時)が機関投資家に対しESGを投資のプロセスに組み入れるという投資原則(PRI)を提唱したことがきっかけとされて、ESGという言葉が知られるようになった。
2006年のPRI発足時と比較すると、2020年現在は、署名期間数が約50倍、署名アセットオーナ数が約17倍、資産運用残高割合が約15倍まで増加している

TOKEN EXPRESS「ESG投資の市場規模、増加の要因とは?世界と日本の現状と今後」より引用
出所:https://token-express.com/company/#about
今後の方針
ESG投資の市場規模、将来性を研究し、ESG投資がどのようにして日本社会に影響を及ぼすのかを分析する。具体的には、ESG投資による企業、個人のメリット、日本人の個人株主の規模、ESG投資の知名度などである。また、日本人がなぜ投資活動を行わないのかということを調べ、日本人が積極的な投資政策を行うことができるような研究をする。
参考文献
Last Upadate:2021/03/24
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