統合型リゾートを正しく理解する
−経済的視点、そしてギャンブル産業の現状から−
早稲田大学社会科学部2年
上沼ゼミT 山内翔

「ラスベガスのカジノ」
出所:芦刈いづみ「ラスベガスのカジノ」AllAbout旅行
はじめに
現在日本では、統合型リゾート設立に関する法律の整備やそれに対する議論がなされている。統合型リゾート設立に関する法律、通称カジノ法案に対しては、賛成、反対さまざまな意見が存在する。しかしメディアを見ると、カジノ法案に対し懐疑的な意見が多く存在するようにも見える。だが、統合型リゾートは大きな経済的効果を秘めている。まずはパチンコ店という身近な例からギャンブルの現状と仕組みを正しく知り、ギャンブルやカジノへの偏見を改善することで、可能性を秘めた統合型リゾートのメリット・デメリットを正しく理解してほしい、というのが私の研究の目的である。
章立て
- 研究動機
- IRの経済効果
- 今後の方針
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1.研究動機
まず、本稿筆者は、ギャンブル経験者である。世間一般的に、ギャンブルに対して良い印象を持つものは少ないであろう。例えば、ギャンブルの代表例にパチンコ店がある。パチンコ店といえば、たばこで空気が汚く、治安が悪く、ガラの悪い人たちがいる印象がないだろうか。実際、本稿筆者も、そのような印象を持っていた。
しかし、それは全くの偏見である。現在、パチンコ店は、健康増進法による禁煙化が進み、空気はかなりクリーンなものとなっている。実際に、コロナ騒動を受け、パチンコ店の換気システムについての実験があった。愛知医科大学感染症科の三鴨廣繁教授監修のもとで行われたその実験の結果は、メディアの報道による印象(コロナ禍初期、パチンコ店は感染のリスクが高いと根拠のない印象でメディアに晒上げられていた)とは大きく異なっている。その実験を取り上げた記事では、「噴射後、ホール内を白く覆ったスモークは徐々に排気口へ吸い込まれ、開始から10分後、客席付近のスモークはほぼ排出。パチンコホール内ではしっかり換気されていることが立証され」、と紹介があり、三鴨教授から「素晴らしい」と評価を受けたほどである(「パチンコホール空気の流れ「見える化」実証実験を公開。感染症科の教授「素晴らしいシステム」と評価」『パチマックス!』)。
また、客層も、印象とは大きく違い、むしろ年配層がとても多い。ギャンブルという一面に変わりはないが、純粋な遊戯、もしくは趣味として楽しむ層も多く見受けられる。つまり、世間一般が持つ印象や偏見と、その事実には異なる部分があるのである。
統合型リゾートは、大きな経済効果を持つ。カジノ、ギャンブルと聞くだけで統合型リゾートに悪い印象を持ってしまうのではなく、メリットやデメリットを正しく知ることで、統合型リゾートの可能性を無駄にしてほしくないというのが、本稿筆者の研究動機である。
2.IRの経済効果
2-1.現在の市場規模
統合型リゾートの経済効果について考察する。そこで、日本の現在のギャンブル産業の市場規模は、一体どれほどなのであろうか。次のグラフは、「レジャー白書2019」の数値をもとに作成された、余暇産業の市場規模を表したものである。

「余暇産業の市場規模」出所:FUJI・SHOJI GOUP「投資家向け情報」より
余暇産業が持つ市場規模は、2019年で71兆9140億円である。その中で、パチンコ・パチスロ産業が持つ市場規模は、20兆7000億円(28.8%)と、飲食の19兆8160億円(27.6%)をも凌いでいる。さらに、そこに公営ギャンブルである競馬や競艇を加えると、ギャンブルという産業は非常に大きな市場規模を持つものである、ということがわかる。
2-2.経済効果
統合型リゾートの設立は大きな経済効果を持つ。大型施設建設による資材の生産や、運営に必要な雇用が生まれる。また、純粋に顧客がカジノやホテルの施設でお金を使ったりもする。数値にしてどれほどなのであろうか。

「タイトル」出所:大阪府・大阪市IR推進局「大阪IR実現に向けて」
大阪市IR推進局の発表によると、夢州における経済的効果として、集客人口が年間約1,500万人、経済波及効果は建設投資で7,600億円、運営で年間6,900億円、また、雇用創出効果も、建設投資で5.1万人、運営で年間8.3万人との数値が出されている。非常に大きな経済効果が期待されているのである。
ギャンブル産業は、現在の日本で既に大きな市場規模を持っており、さらには、統合型リゾートの設立は大きな経済効果が期待されている。デフレが続き、さらにはコロナ禍により落ち込んでいる日本経済にとって、統合型リゾートは大きな可能性を秘めたものなのである。
3.今後の方針
統合型リゾートが大きな経済効果を持つとはいっても、ギャンブル依存症の増加などといった問題は拭えない。本稿筆者自身が一度のめりこんでしまった経験があるため、ギャンブル依存症に対する解決策を、脱却できた当事者としての経験などから研究していきたい。また、これからのIR法案や、世論の動向などをもとに研究を進めていきたい。
参考文献
Last Update:2021/01/31
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