NFTゲームの日本での普及
−新たな方法による資産形成−
早稲田大学社会科学部2年
上沼ゼミT 伊賀元紀

野村証券ELBORDE
「SNSの投稿が数億円に? 話題の「NFT」の仕組みと魅力を解説」(2021/07/29)より
章立て
- 第1章 はじめに
- 第2章 研究意義
- 第3章 NFTゲームとは
- 第4章 先行研究
- 第5章 仮説と今後の方針
- 参考文献
第1章 はじめに
日本人の平均寿命がより高くなりつつある現代、年金という社会保障機構も限界を迎えつつあり、度々定年退職のタイミングや支給年齢や支給条件が厳しくなる方向で変化している。そんな中、老後日本で暮らすには2000万円の貯蓄が必要になると、2019年金融庁が提出した金融審査会市場ワーキンググループ報告書で明らかになったことはニュースでも多く取り上げられていたため、有名であると思う。
このように老後資金の自力調達が求められる現代では、若い内から副業でさらにお金を稼いで貯金するなり、投資で資産形成をするなり様々な老後資金への対応が求められている。現実としては「老後資金ゼロ」と回答した割合は20代では約半数、30〜40代でも3割強であった(フィデリティ投信株式会社「2022年ビジネスパーソン1万人アンケート」)。
本研究では投資、特にNFTゲームというジャンルで資産形成を目指す可能性を探るということが目的である。第二章ではその研究意義を述べる。
第2章 研究意義
老後資金を調達するためには、第一章で述べた通り、副業や投資が手段として挙げられる。しかし副業は、主となる仕事では給与が足りない人がやる場合が多く、老後資金を調達する観点でいえば、副業をすることでプライベートの時間を大きく削ぐ結果となり向いてはいないと言える。2020年の株式会社リクルートの統計では、働く個人の僅か9.8%のみが副業や兼業をしている。
そしてその点投資に関しては老後資金を調達する観点では向いている。それを裏付けるように、フィデリティ投信株式会社の「2022年ビジネスパーソン1万人アンケート」では、ビジネスパーソンの投資家比率は54%となっている。しかし、裏を返せば46%もの人が投資をしていないということとなる。さらに、投資のための情報収集はSNSやブログ、youtube経由が格段に増加している結果となり、お世辞にも金融リテラシーが高いとは言えない。また、「NISA・つみたてNISAを知っていても利用していない」と回答したのは5割弱であった。その中で投資をしない理由は「資金が減るのが嫌だから」が最多で、「いろいろ勉強しなければいけない」が2位となった。
いろいろとデータを提示したが、何を表現したかったかというと、「投資をしている人の間でも、投資をしている人としていない人との間でも、金融リテラシーの格差がある」ということである。金融リテラシーとは、金融や経済に対する知識のことであり、財務省財務総合政策研究所「フィナンシャル・レビュー」の著者である関田静香氏は以下のように述べている。
Van Rooij, Lusardi, and Alessie(2012)3)は「金融リテ
ラシー」を資産蓄積を促す重要な要因であると指摘し,金融
リテラシーが資産蓄積を促す2つのチャネルを示している。
(中略),金融リテラシーのレベルが高い人々ほど,株式市
場に投資する傾向があるといえる。
このように金融リテラシーは重要であるが、これが乏しい人々に啓蒙し金融リテラシーを身に着けさせることも投資を促す手段であるが、そもそも投資をしない理由の2位が「いろいろ勉強しなければいけない」という時点で効果は薄いように思える。よって、投資をしていない人々の既存の行動と投資を組み合わせればよいのではないかと私は考えた。そこでNFTゲームの存在が挙げられる。NFTゲームについての詳細は後述するが、簡単に言うとスマホゲームでお金を稼げるというものである。こちらであれば、金融リテラシー格差に関わらず老後資金の調達のための資産形成を促すことができるのではないか。
長くなったが、本研究ではNFTゲームの日本での普及とNFTゲームによる資産形成は可能であるかを検証・考察する。
第3章 NFTゲームとは
NFTゲームというものを理解するために、まずはNFTとは何であるかを説明しようと思う。NFTとは、「Non Fungible Token(非代替性トークン)」の略である。そしてこの非代替性トークンとは代わりが聞かず、唯一無二である情報や作品である。これは、ブロックチェーンという技術によって証明されており、簡単に言うとオリジナルの情報を生産した人を特定できる技術である。
そして、このNFTという仕組みを利用してゲームをするのがNFTゲームである。具体的な仕組みを紹介するうえで、フィリピンで有名なNFTゲームであるaxie infinityというゲームを取り上げる。このゲームはモンスターであるaxieを使役して、仮想通貨であるSLPを得て、それを現金化することでお金を稼ぐゲームなのだ。ここでSLPを稼ぐ手段は4つある。
まず1つ目はゲーム内でステージをクリアするPVEと、対人戦であるPVPに勝利することでSLPを獲得することができる。これは初心者でも1ヵ月で約5万円〜10万円ほど稼ぐことができる程度の量が貰える。
そして2つ目はゲーム内で獲得したaxieやアイテム等を取引所で販売してSLPを稼ぐことである。これは、前述したNFTという仕組みを活用しており、ブロックチェーンという技術で一つ一つ識別されてNFT化されており、それを売買するのである。なぜNFT化するのかというと、ゲームをハックすることで偽造されたアイテムが売買されないようにリスクを減らすためである。偽造したものが出回ってしまうと、SLPの価値が暴落してしまい、ゲームが崩壊してしまうことは想像に難くないだろう。
そして3つ目は、axieを貸出することで継続的にSLPを得ることができる。イメージ的にはTUTAYAのDVDレンタルだろう。誰が貸し出ししているかというのは2つ目と同じくNFTの技術によって管理・証明されている。
最後に4つ目はゲーム内の土地を販売して稼ぐというものである。これはゲーム内で限りある土地を他者から購入してそれを売りに出すものである。この土地を持っているとゲーム内でいろいろな特典があるらしいが省略する。
また、ゲームを始める上で必要な初期投資は最初にaxieをショップで購入することである。こちらは3万円ほどであり、この初期投資分も払えない人は「スカラーシップ制度」というものでaxieを所有している者が貸し出すことで初期費用なしでゲームを始めることができる。この場合、借りた者はゲームで獲得したSLPの数十%を貸したものに支払う。
このような方法でお金を稼ぐことができるのだが、このSLPの時価の変動は利用者の量・知名度・需要によって左右されることとなる。
以上がNFTゲームの軽い説明である。このようなものを日本で普及し、資産形成のために使えるのかを考察する。
第4章 先行研究
先行研究として、久詰陽子,(2022)「フィリピンにおけるブロックチェーンゲームの流行 : 国民の新たな収入源、フィリピンはNFTのホットスポットへ」が挙げられる。この研究では、コロナ禍で収入が減少しているなか、先述したaxie nfinityが新たな国民の収入源となったとなったことについての論文となっている。論文では様々なNFTゲームの紹介やプレイヤー数、ゲームによる収入等が記述されている。
第5章 仮説と今後の方針
本章では、@如何にしてNFTゲームを日本で普及するのか、A資産形成に至るまで振興することができるのかについての本稿筆者の仮説と、今後の研究方針について記述する。
まず、@Aそれぞれの仮説を述べる。@においてはNFTゲームを日本で普及する上で重要なことはリスクの低さを認知させることであるという仮説を立てた。Aにおいては資産形成に至るまで振興するには知名度を増やし利用者を増加させることが重要である仮説を立てた。
@の仮説を立てた根拠としては第2章で述べたフィデリティ投信株式会社の「2022年ビジネスパーソン1万人アンケート」の中で投資をしない理由で最多であったのが「資金が減るのが嫌だから」であるからだ。だからこそ、NFTゲームのリスクの低さを強調することで、敷居の低さを認知させることこそが日本での普及を促すものとなるのではないか。
Aの仮説を立てた根拠としては、第3章で記述した通り、ゲーム内で貰える仮想通貨の時価は利用者の量・知名度・需要によって左右されることとなるためである。これは利用者等が増えることによって時価が上がるだけでなく、安定性も増すためである。だからこそ、知名度を増やし、利用者を増加させることが重要であるのである。そのために、新規参入の企業ではなく、既存企業の日本で有名なゲーム会社によるNFTゲーム開発が効率良いのではないかと考える。
今後の研究方針としては、2つ挙げられる。1つ目は日本の大企業のゲーム開発とマーケティング・宣伝の分析から、普及方法を模索することだ。そして2つ目は先行研究や既存のNFTゲームを分析し、NFTゲームの施策や利用者が増えた要因を明らかにすることだ。
以上、本稿筆者の研究に関する研究計画である。研究計画を基に、研究を進め、問題に対して考察を行う。
参考文献・リンクページ
- 野村証券ELBORDE「SNSの投稿が数億円に? 話題の「NFT」の仕組みと魅力を解説」
https://www.nomura.co.jp/el_borde/view/0053/最終閲覧日(2023/1/22)
- 株式会社リクルート「【*新設計版】兼業・副業に関する動向調査(2020)概要版 働く個人の9.8%が兼業・副業を実施中 兼業・副業制度あり企業の72.7%が過去3年以内に制度を導入」
https://www.recruit.co.jp/newsroom/recruitcareer/news/pressrelease/2021/210225-02/最終閲覧日(2023/1/22)
- Fidelity international「フィデリティ・ビジネスパーソン1万人アンケート」
https://s3-ap-southeast-1.amazonaws.com/apacwpfhmultisiteprod-live-b260db6793404af7821690776d2b-cf88807/PDFs/WI/report_20220920.pdf最終閲覧日(2023/1/22)
- 〈財務省財務総合政策研究所「フィナンシャル・レビュー」令和2年第 1 号(通巻第 142 号)2020 年 3 月号>
https://www.mof.go.jp/pri/publication/financial_review/fr_list8/r142/r142_03.pdf
- 久詰陽子「フィリピンにおけるブロックチェーンゲームの流行」国際金融2022年10月1日号
https://www.jcif.or.jp/report/2022/PHL202211029964.html最終閲覧日(2023/1/22)
Last Update: 2022/12/13
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