教育とジェンダー価値観の形成
−日本社会のジェンダーギャップ是正に向けて−
早稲田大学社会科学部2年
上沼ゼミT 矢作桃子

追手門学院大学「OTEMON VIEW (2022/10/07)」より
章立て
- 第1章 はじめに
- 第2章 研究意義
- 第3章 先行研究
- 第4章 仮説と今後の方針
- 参考文献
第1章 はじめに
2021年3月に世界経済フォーラムが発表した「グローバル・ジェンダー・ギャップ・レポート2021」において、男女格差を示すジェンダーギャップ指数が、156カ国中120位という先進国の中では最低水準の日本。日本社会のジェンダーへの取り組みは、世界的に見て後進国と言える。価値観の多様化が進む世界の流れの中で、先進国の日本のジェンダーギャップ解消が進まないのは何故だろうか。
本稿筆者は、「変わる世界」の中で、「男は外で働き、女は家庭を守る」という日本人の古いジェンダーロールが「変わりづらい」ことに原因があると考える。また、その様な凝り固まった価値観は、社会全体で幼い頃からの教育による影響が大きいのではないかと考えた。特に、自己形成に深く関わる幼児期から青年期に行われている教育に着目し、日本の教育がジェンダー価値観形成に与える影響や問題点について述べる。
本論では、日本人のジェンダーの概念がどの様に形成されてきたかに触れ、ジェンダー平等を実現するには、教育の観点から有効なアプローチ方法を研究する。
第2章 研究意義
ジェンダーとは、社会の中で構築された「男らしさ」「女らしさ」を指す。先に述べた様に、日本では「男は男らしく、女は女らしく」あるべきといった決め付けの概念が、今日でも強く根付いている。
さらに、「男性は外で仕事をして稼ぎ、女性は家庭に入り家事育児に励むべき」という考え方が、かつての日本社会ではごく一般的であった。1986年に男女雇用機会均等法が施行され、以来、女性の社会進出が進んできた。
しかしながら、未だに男女の社会的な役割に偏りが存在し、女性の持つ可能性が制限されてきた。男性が中心となって活躍する社会には多くの課題が顕在する。
例えば、日本企業における女性の管理職は14.7%、パート等の非正規雇用で働く女性は男性の約2倍、女性の平均所得は男性より43.7%低いという現状がある。また、女性の不利益ばかりでなく、男性は労働を求められる為、過労死のリスクは女性より高い事や、看護師、保育士等の男性が占める割合の低い職種が一定数存在することから、無意識のうちに男性の職業選択の幅も狭まっている可能性が示唆される。さらに、代表的な「男らしさ」「女らしさ」の印象に当てはまらない人々は、生きづらさを感じることとなる。
このように、ジェンダー不平等の多様性が認められない社会では、政治、経済等の様々な面において、発展が阻害されるといっても過言ではない。日本におけるジェンダーバイアスが、どのように形作られてきたかを研究し、偏った価値観を根本から見直す事が、ジェンダーギャップの是正ないしは、日本社会の発展に寄与するのではないか。
第3章 先行研究
本章では、国内外で現在行われているジェンダー教育の例について述べる。
まず、ジェンダー教育とは、「性別にとらわれす、全ての人の人権を尊重する程度を育むもの」である。生物的な性が異なる男女を全く同等に扱うためのものではなく、平等の権利を持っていることを理解させ、性別問わず、学習、経験の機会が与えられるべきものであるとする。
イギリスにおいては、2010年に「平等法」が制定された。これは、女性への一方的な不利益な扱いや、性別による差別を撤廃するものである。例えば、男子は技術、女子は家庭科を学ばなければならない、男子の持ち物のカラーは青、女子はピンクといった色の強制的な指定を禁止するといったものだ。
スウェーデンにおいては、1998年に教育法を改訂し、教育機関で「男の子は強くあれ」「女の子はおしとやかでいなさい」等の固定概念を植え付ける指導をすべて違法とした。
他方、日本では、2015年に文部科学省が「性同一性障害に係る児童生徒に対するきめ細やかな対応の実施等について」を発表した。その内容は、各々の性自認、性表現に伴った制服の着用を認める、多目的トイレ・職員トイレの使用を認める、宿泊合宿でのひとり部屋の使用、入浴時間の考慮を行うなどだ。一人ひとりの多様性を認識した、丁寧な対応に感じられるものの、対象はあくまで「性同一性障害に係る児童生徒」であり、上記の例の様な法的な拘束力は及ばない。日本国内でも、地域によってジェンダー教育に対する考え方や取り組みの質が大きく異なっているのが課題だ。
また、教育は学校で行われるものだけでなく、家庭内の両親、兄弟、祖父母等の影響を大きく受けて、子どもは価値観を形成する。学校、家庭、地域社会で一貫した新しい教育の仕組みづくりが求められる。
第4章 仮説と今後の方針
日本と諸外国で行われているジェンダー教育について、調べて比較することで、日本の課題を考察する。そのうえで、現状、当たり前の様に思われている、日本の幼稚園・保育園、小学校で行われている取り組みの中で、排除すべきもの、推進すべきもの、新しく取り入れるべきもの等を提言する。
参考文献・リンクページ
Last Update: 2022/01/31
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